2012年7月5日木曜日

ハイドン:交響曲第53番ニ長調「帝国」より第4楽章(異稿)


「帝国」と名付けられた第53番の交響曲には、3つの版が存在する。そのうちもっとも顕著なのが第4楽章の違いである。そして火事で焼失するなどして現状では以下の2つのバージョンのどちらかが演奏されるケースが多い。

   Version A: カプリッチョ 火事で焼失後あとから作成された
   Version B: プレスト 序曲(Hob.Ia-7)から転用したが火事で焼失

さて、私は学者ではないのでその細かい違いやどちらが正しか、という話題には立ち入らない。手元にあるCDがどちらの演奏を行っているか、一生懸命調べたので書いておこうと思う。

  オルフェウス管弦楽団盤 A
  アダム・フィッシャー盤 B

そしてこの鈴木秀美と日本人のプレーヤーによる特筆すべき名演奏では、何と両方が収録されている。もっとも、Bが別トラックになっており、普通に聞くとAということになる。

聞き比べた感じでは、鈴木の演奏ではAのティンパニが目立ち過ぎで、Bの方に好感をもった(ライヴ収録なので演奏が熱くなっているからだろう。オルフェウス管弦楽団はその点、丁度いい感じで落ち着いた名演)。だが、音楽的に合っているのはAだという指摘が多い。コーダはAの方が大規模である。ちなみにアーノンクール盤ではA、ドラティ盤ではBだそうだ。ホグウッドは鈴木と同様、Aで演奏しBを別トラックで収録している。

さらにBの原曲は、1877年に作曲された序曲ニ長調からの転用で、これを演奏したCDまで持っていることが判明した。マリス・ヤンソンスがバイエルン放送交響楽団を指揮したライブ盤で2008年の収録。この演奏はモダン楽器による演奏で、コンサートの最初に置かれたもの。演奏はやはりきびきびとした古楽器によるものの方が私の感性には合っていると感じた。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ベッリーニ:歌劇「夢遊病の女」(The MET Live in HD Series 2025–2026)

荒唐無稽なストーリーを持つ歌劇《夢遊病の女》を理解するには、想像力が必要だ。主役のアミーナ(ソプラノのネイディーン・シエラ)は美しい女性だが、孤児として水車小屋で育てられた。舞台はスイスの田舎の集落で、そこは閉鎖的な社会である。彼女は自身の出自へのコンプレックスと、閉ざされた環境...