2015年1月15日木曜日

J.シュトラウス:ワルツ・ポルカ集(フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団)

お正月だということでご多聞に漏れずウィンナ・ワルツを聞きたくなった。今年のズビン・メータによるウィーン・フィルのニューイヤーコンサートも悪くはないが(特に「美しく青きドナウ」!)、かと言って以前の録音を聞く気にもなれない。いっそもっと古い演奏、しかもウィーン・フィルでないやつにしようということになって、フリッチャイの1961年の録音を聞いてみた。演奏はベルリン放送交響楽団。実はこの演奏を聞くのは初めてであった。されどなかなかいい味のする演奏で好きになり、ここで取り上げることにした次第である。

最初の「こうもり」序曲は、カラヤンの奇麗な演奏やクライバーの真剣な演奏ばかりを聞いていると忘れてしまいそうになる素朴な味わいを残している(平凡という意味でもある)。だがそれがいい、と思う時もあるわけで、時には古いこのような演奏(ベームやプレヴィンなら近いかも)も揃えておくのは悪くはない。オーケストラを合わせるのが難しいフレーズになると、テンポを遅くしている。

「アンネン・ポルカ」はフランス風ポルカの中では代表的な作品だが、洒落た味わいのする曲だ。この曲を聞くと小学校の朝の登校時間を思い出す。BGMとして聞き流していると、いつのまにか「皇帝円舞曲」につながっている。よく考えるとコーダの部分が抜け落ちているのだ。そういうわけで「皇帝円舞曲」の序奏に静かに入っていくところがまたいい。

「ラデツキー行進曲」が早くも演奏され、そのあとに「美しく青きドナウ」となるあたりの曲の並びは、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの流れに逆行している。そういうあたりもまた、これらの曲の発見につながるので楽しんで聞いた。そして最後に「ウィーンの森の物語」である。この曲は私の最もお気に入りで、最後に演奏されるのがいい。

フリッチャイは若くして亡くなった職人的な指揮者だが、数々の録音が残っていてどれも個性的である。重要なメロディーになると急にテンポを落として丁寧に音楽を仕上げているのが特徴だ。それでウィンナ・ワルツもまた個性的な演奏になっている。ベルリンのオーケストラが、ある種真面目にそれを実現している。シュトラウスの音楽は、いわば一種の「流行音楽」なので、楽しければそれでいい。


【収録曲】
1.喜歌劇「こうもり」序曲
2.「アンネン・ポルカ」作品117
3.皇帝円舞曲 作品437
4.「トリッチ・トラッチ・ポルカ」作品214
5.ラデツキー行進曲 作品228
6.ワルツ「美しく青きドナウ」作品314
7.ポルカ「ハンガリー万歳」作品332
8.ワルツ「ウィーンの森の物語」作品325 


0 件のコメント:

コメントを投稿

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調作品102(Vn: ルノー・カピュソン、Vc: ゴーティエ・カピュソン、チョン・ミュンフン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)

ブラームスには2つのピアノ協奏曲、1つのヴァイオリン協奏曲のほかに、もう一つ協奏曲がある。それが「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」という曲である。ところがこの曲は作品番号が102であることからもわかるように、これはブラームス晩年の作品であり(54歳)、すでに歴史に残る4つの交...