そのような行進曲は、大きくヨーロッパ型とアメリカ型に分かれる、とかつてラジオで山本直純氏が語っていた。山本氏によれば、ドイツを中心としたヨーロッパ型の行進曲は幾分足取りが遅く、それに対してアメリカ型のマーチは、速くて威勢がいいということだった。そしてそこに、明治時代になって軍事力の近代化を急ぐ日本の行進曲も登場した。
我が国の行進曲は、ごく簡単に言えば戦前の作品と戦後の作品に分かれる。戦前は軍歌風で、中間部に歌詞を伴って歌うメロディー部分が含まれている。「愛国行進曲」などがその例だろうか。一方、戦後はスポーツ中継などのテーマとして、このような政治的意図を感じさせない曲が中心になった。とはいえ、1980年代頃までは、国体や高校野球に限らず、運動会でも一糸乱れず行進することがもてはやされていた。これは世界的な傾向だったと思うが、今ではオリンピックでもそういう行進の仕方はしない。
スポーツ大会の「民主化」に伴って、実用的な行進曲の需要は消えたのかもしれない。しかし、我が国の古典的行進曲をフル・オーケストラ用に編曲して演奏する決定的な一枚が登場していたことに、私は最近気づいた。そのアルバムには「世界に冠たる日本のマーチ」などと威勢よい副題がついていてやや気持ち悪いのだが、演奏は実に堂々とした、歯切れの良いものである。それを何とロンドン・フィルが演奏している。
指揮は武藤英明で、桐朋学園を卒業し、主にチェコで活躍している指揮者だが、日本のオーケストラへの登壇も多いようだ。ただ、私はまだ実演に接したことはない。レーベルは我が国のEXTON(オクタヴィア・レコード)で、ここは数多くの日本人による演奏を精力的にリリースしているが、当盤もその一枚である。収録された曲を見ると、戦前・戦後をバランスよく交えたものだが、少し短い。私としては、戦前のものなら「愛国行進曲」、戦後のものであれば「若い力」や「大空」あたりが欲しかったところである。何せフル・オーケストラによる行進曲集は貴重なので、もう少し欲張って欲しかったというのが正直な感想。
最後になぜか「鉄腕アトム」が入っているのはご愛嬌というものだろう。だとすれば、「アンパンマン・マーチ」でも「トトロ」でも良かった気がする
- 古関裕而:オリンピック・マーチ
- 團伊玖磨:祝典行進曲
- 古関裕而:栄冠は君に輝く
- レイモンド服部:行進曲「コバルトの空」
- 吉本光蔵:君が代行進曲
- 瀬戸口藤吉:軍艦行進曲
- 奥村一:行進曲「太陽の下に」
- 川崎優:行進曲「希望」
- 大沼哲:立派な青年
- 古関裕而:スポーツショー行進曲
- 黛敏郎:スポーツ行進曲
- 高達雄:鉄腕アトム





