そのイッポリトフ=イワーノフの「酋長の行列」は、クラシック音楽の入門用のレコード(管弦楽曲集)で取り上げられることが、かつてはたまにあった。私はこの曲を、若き日のレナード・バーンスタインがニューヨーク・フィルハーモニックを指揮したレコード、すなわち1960年代の録音で聴いた。その印象は鮮明で、溌剌として清々しく躍動感に満ちた演奏であり、それまでにない類のものだと思ったものだ。
久しぶりに「酋長の行列」を聴いてみたくなり、いまとなっては数多くの録音がリリースされているのだろうかといろいろ検索してみたが、これという演奏に出会わない。この作曲家の珍しい作品を集めたCDも何枚か見つけたが、演奏がいまひとつである。「酋長の行列」に限っても、意外なほど録音が多くない。そればかりか、有名な指揮者からは無視されているような感じさえする。
そんな中で、私は再びバーンスタインの演奏を聴くしかないと思うに至ったのだが、いかんせん、これは古い録音である。ほかにボロディンの歌劇「イーゴリ公」から「だったん人の踊り」なども収録されているが、いまとなっては聴くのもつらい。もう「酋長の行列」を最新の録音で聴くことは諦めるしかないのだろうか、などと考えていたところ、このバーンスタインの演奏が何と2017年にリマスターされリリースされていることがわかった。そうだ、やはり同じ思いにかられていた人がいたということだ。この古いバーンスタインの演奏を、最新の技術で蘇らせて聴きたいと。
さっそくSpotifyからダウンロードして聴いてみたが、やはりほかの演奏とは違って、バーンスタイン節ともいうべき新鮮さにあふれている。テンポは少し速めにとられ、まるで指揮台を踏み鳴らすかのような仕草が見えてくるようだ。引き締まった指揮は、晩年の演奏に見られるような、ゆったりとしたテンポに傾くこともなく、最後まで緊張感を保っている。このようにして「だったん人の踊り」の劇的なリズムを堪能したあと、いよいよ「コーカサスの風景」が始まる。ペルシャの隊列が市場を通り過ぎるような光景を私は勝手にイメージしているのだが、そのあたりの盛り上がりはバーンスタインならではのものである。タメを作ってコーダになだれ込むと、まるで映画音楽のようにスパッと終わる。
ディスクにはこのあと、ムソルグスキーの有名な2曲、すなわち「はげ山の一夜」と「モスクワ川の夜明け」(歌劇「ホヴァンシチェナ」前奏曲)が続き、最後に何とグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲で締めくくられる。冒頭に配置して一気に引き込む録音が多い中で、「ルスラン」を最後に持ってくるあたりは憎い演出と言わねばならない。このようにして、2017年のリマスター版は、懐かしい思いをもたらしながら、いまだに色褪せることのない、バーンスタインの若き日の生き生きとした姿を伝えてやまない。
【収録曲】
1. 歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の娘の踊り」
2. 同「だったん人の踊り」
イッポリトフ=イワーノフ
3. 組曲「コーカサスの風景」より「村にて」
4. 同「酋長の行列」
ムソルグスキー
5. 「はげ山の一夜」(リムスキー=コルサコフ編)
6. 歌劇「ホヴァンシチェナ」前奏曲(モスクワ川の夜明け)
グリンカ
7. 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲




