
そのiPod Classicは最近ひそかに販売が停止され、大容量のDAPは少数の海外メーカーを除けば、SONY製品しかなくなってしまった。SONYのWalkmanは、老舗としてのこだわりからか、まだこの分野から撤退をしているわけではなく、いやむしろここ最近は結構魅力的な製品が出ているとは思っていた。数年前からのことだ。だが、ネット対応や大画面化など、私の思う方向とは逆方向に向かい、その分高価であった。これならiPod nanoのような小型で安いプレイヤーの方が使いやすい。そしてiPodを買いか言えるくらいなら・・・いっそこのまま我慢して使い続けよう、ということで気がつけば10年近くの期間が過ぎた。
オークションで高騰しているiPod Classicを売って、別のものに買い替えようとしていたが、さほど高く売れるわけでもないとあきらめていたところ、SONYが昨秋発売したWalkmanの新製品は、何とネット対応を取りやめたというではないか。デジタルアンプが搭載され、Appleでは不可能な「ハイレゾ音源」すなわち24bitのflacファイルなどもそのまま再生してくれる。マイクロSDカードで容量は増設でき、私の好きなFMチューナーまで内蔵されている・・・。
今や風前の灯となったSONYに再び私は取りつかれ、気が付いてみるとどの色の製品にしようかと迷いだす始末。電気屋の店頭をのぞいてみると、あるはあるは、沢山の種類の音楽ごとに何台ものA-16(赤色)を並べ、高級ヘッドフォンをつないで視聴できるスタンドがいくつも並んでいる。SONYはこれが売れると見ているのだろう。実際どうもそのようで、久しぶりにSONY製品を買ったと言う人が多い。
そういうわけで私も銀色のA-16(32GB)を購入、手持ちのpioneer製の安いイヤホンをつないだところ、これが何ともいいなりっぷりで、聞く音楽全てが新鮮によみがえり、通勤途中の楽しいことと言ったらないくらいだ。クラシックだろうとポップスだろうと、頭の中に音楽が広がり、それが隅々にまでくっきりと、パワーを持って立ち上がる様はさすがデジタルアンプというべきか。
ただしSONYの音作りはナチュラルというわけではなくやや作為的である。特に低音にその傾向が強い。付属のイヤホンも、他のSONY製のイヤホンも、つなげて聞くと最初のうちはいいが、徐々に疲れが出てくる。歩きながら聞くのが携帯音楽プレーヤーなので、これは良くない。そこで私はいろいろ試行錯誤を重ねた結果、イコライザーでイヤホンにあった音にカスタマイズすることに2週間かけて成功した。iPodと違い、イコライザーの自由度が高いのはこの機種の良い点である。
音楽の転送の簡単さやファイルの操作方法はiPodに劣るが、それも慣れ次第という側面がある。むしろ音楽専用としたことで音質がいいうえに、電池の長持ちが素晴らしい。というわけで私の外出時の音楽生活は一変した。最近はスマートフォンで音楽を聞く人が多いようだし、音楽の購入も減少傾向にあるというが、私はしばらくはCDからリッピングしたWAV音源をコピーして、音楽を持ち歩くことにしている。それからMP3で圧縮された音源も、イヤホンで聞く限りはそん色がない(私の場合、通常256bpsとしている)。
SONYの製品なので日本のメーカーらしく、カラオケ機能だの、遅く聞く機能だの、歌詞を表示する機能だのと盛り沢山である。それからbluetooth搭載でリモートスピーカーに接続でき足り、デジタル出力があるので別のDACにつないでみたりという楽しみもあるにはある。けれども純粋にそのまま音楽を聞くだけでいいと思う。ハイレゾ音源は持っている以上、聞けないというのも悔しいので有難いが、容量を食う上にとりたてて音質がいいというわけでもない(イヤホンで聞く場合)。
とにかく音楽を聞くという趣味自体が低品質化しているような気がしていた昨今、SONYが新製品でヒットを飛ばしているということが嬉しいし、私にとってもタイムリーな製品であった。何度も言うように、3000円クラスの安めのイヤホンでもうまくイコライザーを使って好みの音にアレンジして聞くというのが、この製品の楽しさではないかと思う。