今年はオッフェンバックの生誕100周年である。ドイツ生まれでありながらフランスに帰化したこの作曲家は、オペレッタの原型を作ったと言われている。そのオペレッタ作曲家として有名なスッペもまた同じ1819年の生まれで、こちらはウィーンで活躍した人である。私はウィーンを旅行した時、意外にもスッペのお墓が大作曲家に混じって堂々と建っていたのを覚えている。
だから今年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでは、2人の作品がそれぞれ最低1曲は演奏されるものだと思っていた。喜歌劇「天国と地獄」序曲(オッフェンバック)や喜歌劇「軽騎兵」序曲(スッペ)は、かつて取り上げられたこともあったから、私は楽しみにしていたのだが、どういうわけか今年の指揮者ティーレマンは、これらの曲を取り上げることはなかった。
私はオペレッタのような、洒落た気品をただよわせつつも下世話な話が満載の芝居は大好きであり(松竹新喜劇などを思い出す)、またその音楽がさほど難しくなく、簡単に歌えるようなメロディーで甘く切なく、時には乱痴気騒ぎもあるという庶民性こそ大歓迎な聞き手である。同じような人は、意外に多いような気がしているが、クラシック好きというのは、オペレッタを少しランクの低い音楽とみなす習慣があるため、オペレッタなどは人に知られないよう、こっそりと楽しむべきもののようである(私の友人の父親は、音楽家としても有名な家系だったが、その方が無くなって久しい時期に、彼の自宅を訪れたとき、ラックに並んでいた数千枚のLPの中に、少なからぬ枚数のウィンナ・ワルツやオペレッタ全曲盤が存在していたのを、心から嬉しく思った)。
そのオペレッタ音楽の代表格とも言えるオッフェンバックが作曲した数々の作品から、有名な曲を抜き出して集めたCDが、私のオペレッタ・ディスク第1号だった。演奏はウィーン交響楽団、指揮は何とブルーノ・ヴァイル。SONYにハイドンなどの作品を、古楽器オーケストラ(ターフェルムジーク)で残した大御所による演奏と聞いて、これは面白いと思った。実際そうだった。ここでウィーン響は、真面目にこれらの作品を演奏し、録音も素晴らしい。
どの曲も前半は威勢のいい序奏に始まって、ゆったりと美しいメロディーが続くと、途中から何やら動き出したくなる様子。ついに乱痴気騒ぎのような軽快な行進曲に写るという展開。「天国と地獄」と同じだと思えばいい。オッフェンバックは愛すべき歌劇「ホフマン物語」を作曲したことで知られ、その音楽には私は何度も触れているが、100曲にも及ぶと言われる喜歌劇については、これらの序曲を除けば、一度も触れたことはない。
【収録曲】
1. 喜歌劇「鼓手長の娘」序曲
2. 喜歌劇「天国と地獄(地獄のオルフェ)」序曲
3. 喜歌劇「美しきエレーヌ」序曲
4. 喜歌劇「青ひげ」序曲
5. 喜歌劇「ジェロルスタン女大公殿下」序曲
6. 喜歌劇「ドニ夫妻」序曲
7. 喜歌劇「パリの生活」序曲
8. 喜歌劇「ヴェル=ヴェル」序曲
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