2023年4月18日火曜日

バルトーク:管弦楽曲集(アダム・フィッシャー指揮ハンガリー国立交響楽団)

前にも述べたように、私はバルトークが苦手だった。しかしこの舞曲を中心とした管弦楽曲集に接した時、これは聞けると思った。ハンガリー生まれのアダム・フィッシャーがハンガリー国立交響楽団を指揮したCDである。このCDはNimbusという黒いジャケットのレーベルから発売されていた。Numbusというレコード会社は、しなしながらいつのまにか倒産し、私のCDを含め多くが廃盤、入手不可能となってしまった。私は中古屋を巡り、何とかあと1枚のCDを買い求めた。

バルトークの音楽は、ハンガリーやジプシーを題材にした複雑なリズムが特徴である。ピアニストとして有名だったので数々のピアノ作品を手掛けたが、それらのいくつかは管弦楽曲に編曲された。「ルーマニア民族舞曲」もその一つである。「棒踊り」「帯踊り」「踏み踊り」「角笛の踊り」「ルーマニア風ポルカ」「速い踊り」の6つのパートから成っている。タイトルを見るだけでわくわくする。ルーマニアはかつてハンガリー王国の一部だった地域が存在する。そこの民謡を題材に選んだ、と解説にはある。難解で万人受けしないバルトーク節はここには不在で、大変親しみやすい。7分足らずの短い曲だが、それぞれに独特の表情付けがある。何といってもクラシックの世界では、ルーマニアなどといった国は未知の国で、どのような音楽が存在するのか興味深い。私はもちろん行ったことはないが、健康な体でなくなった今となっては、もう一生行くこともないであろう。

一方「舞踊組曲」は、この中では最も有名な曲ではないかと思う。この曲は最初から管弦楽曲として作曲された。ハンガリーの首都、ブダとペストが合併して50周年を記念する年に委譲されたというのが作曲の経緯である。18分ほどの曲は6つの部分からなり、音楽は切れ目なく演奏される。「ルーマニア民族舞曲」ほど気さくな作品ではないが、バルトークの特徴が程よく現れていて親しみやすい。ファゴットやトロンボーン、ハープなどが活躍し、コル・レーニョと呼ばれる弦楽器の奏法(弓の木の部分で弦を叩く)やグリッサンド(ハープなどで滑らせるように弾く)なども見られる。

「ハンガリーの風景」はピアノ曲からの編曲(5曲)。全体が非常に描写的で親しみやすいが、面白いのは「トランシルヴァニアの夕べ」でのオーボエ(もしかするとコール・アングレ)の牧歌的なメロディーに五音音階が用いられていることもあって、非常に日本風の響きがすることである。ここでハンガリーはアジア系、などといい加減で陳腐なことを持ち出す気はないが、バルトークの別の面を見る思いがする。「2つの映像」はドビュッシーの影響を受けた幻想的な管弦楽曲で、「花盛り」「村の踊り」の2曲から成る。それぞれ10分程度の曲。特に「花盛り」はドビュッシーそのものの作風で、間違えそうなほどだ。バルトークにもこのような作品があったのかと思った。

アダム・フィッシャーの指揮はメリハリが効いて録音も大変良い。独特の透明感とややくすんだ東欧風の色彩が感じられる、とてもチャーミングな一枚。


【収録曲】
1. ルーマニア民族舞曲 Sz.68
2. 舞踊組曲 Sz.77
3. ハンガリーの風景 Sz.97
4. 2つの映像 作品10, Sz.46
5. ルーマニア舞曲 Sz.47a

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