2013年8月4日日曜日

旅行ガイド:「週末バンコクでちょっと脱力」(下川裕治、朝日文庫、2013)

2011年、2012年と2年続けて年末年始にタイを訪れた。15年以上もブランクのあるバンコクへは、とうとう今年のお正月に出かけた。そのことは前に書いた。今回ホアヒン、バンコクを訪問するに際しては、当時のガイドブックは当然役に立たなかった。そこでいろいろ参考にした本について、まず書いておく。

Webでの情報収集が主流になったとは言え、行き先とその周辺について体系的に得られる情報としては、私はいまだにガイドブックに期待を寄せている。だが日本語で書かれたバックパッカー向けガイドブックは、ここのところ下火になってしまった。かつてロンリー・プラネットのシリーズが順次刊行された時には、あのガイドブックが日本語で読めるのか、と期待したものだ。ヨーロッパのいくつかとニューヨークなどが発売され、私は行くあてもないのに買ったものだ。その中に「タイ」編がある。少し古くなったとはいえ、ホアヒンとその周辺やチャアムについては、このガイドがもっとも役になった。それに比べると、「地球の歩き方」やその他のガイドは、少し情報の体系化に問題がある。

ガイドブックに期待するのは、単なる写真の羅列ではない。かつては最新の情報、すなわち交通機関やホテルの情報に加え、簡単な観光地の紹介であった。だが、それらはインターネットにとって代わられつつある。それでもなお、ガイドブックが一定の地位を保ち得るとすれば、それらに対する一定の価値観に沿った体系化であろうと思う。日本のガイドブックでこれを実現しているものはない。

ガイドブックは持って行かないと割り切ればいいのかも知れない。この場合、「行く気にさせる」というのがその役割となる。もはや実用ガイドの枠を超えるが、ありきたりのガイドブックには掲載されていない記事が、筆者の主観で取り上げられるとき、その文章が楽しければそれなりにいい本となる。そういう意味で、昨年買った「週末香港」のシリーズである「週末バンコク」(吉田友和、平凡社)は、読むだけで楽しい。最近のバンコクがどのようなものかを手っ取り早く知ることができる。

週末にバンコクにまで出かけるのがいいのかどうかは知らないが、かつてバックパッカーとして彼の地を愛したものとしてはその変貌ぶりに何か戸惑いを覚えるのは事実である。その気持を代弁してくれる文庫が書店に並んでいて買った。それが下川裕治著「週末バンコクでちょっと脱力」である。少しでもバンコクを知っているものであれば、ここに書かれている内容はしみじみと面白く読めるだろう。

ガイドブックとして実用に徹するのであれば、最新の地図は欠かせない。ところが我が国のガイドブックはその点でも失格である。結局、日本人向けガイドとは、写真の雑誌のようなものだ。そしてその情報が客観的にに見てどうなのかはわからない。地図にしても必要な部分がパッと出てこない。レストランの記事は非常に多いが、それとて索引があるわけではない。買っても1時間もすれば飽きてくるものばかりである。

そのような中で、比較的地図が充実しており、しかも簡単な観光ガイドにもなっているのが「歩くバンコク」(DAKO編集部、メディアポルタ)である。この雑誌は現地で作成された情報を掲載しているようだ。バンコクの第一人者である下川裕治氏が編集人となっている。つまり情報源はみなよく似ているようだ。

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