毎年、数多くの作品が演奏されるお正月恒例のニューイヤーコンサートだが、後から振り返って、さてこの作品はいつ誰によって演奏されたか、と考えることは多いにもかかわらず、なかなか思い出せない。そもそも誰が演奏しても、よく似た演奏になるのも確かだが、その分印象に残らないということだろうか。もっとも、シュトラウス一家のワルツは、ウィーン・フィルでなくてもいい演奏が存在するわけで、何も有名指揮者が意を決して望むような大曲でもない。「美しく青きドナウ」なら毎年、アンコールに演奏されているから、まあ旬の演奏はその時にだけ聞いておけばいい、という考えもある。実際、どの作品が何年に誰によって演奏されたかを一覧できるアーカイブは、いろいろ探したが見当たらなかった。
そうであるなら自分で作るしかない。ここではヨハンの、いわゆる「十大ワルツ」、およびヨーゼフの「七大ワルツ」を中心に主要作品を取り上げる。またヨハンやスッペによるオペレッタの序曲は、別に取り上げることとする。★は特に印象が残った演奏。☆は次点。私が様々なソースをもとにまとめただけなので、抜け漏れがあった場合にはご容赦いただきたい。また、演奏は一部を除き、ニューイヤーコンサートが一気にメジャー化した1987年のカラヤン以降のものを取り上げた。それ以前の「古き良き時代」には、クラウス、ボスコフスキーらが数多く演奏しており、これらが今もって最高の演奏とされていることは、言うまでもない。
- 「加速度円舞曲」作品234
- クライバー(89)、マゼール(94)、ムーティ(04)、メータ(15)
- 真に印象に残る演奏は、これらではなくクリップス(57)
- 「朝の新聞」作品279
- ★メータ(95)、アーノンクール(01)、プレートル(10)、バレンボイム(22)
- 「ウィーンのボンボン」作品307
- マゼール(84)、メータ(98)、プレートル(10)
- 「美しく青きドナウ」作品314
- ★メータ(15)、☆アーノンクール(01)、他多数
- 毎年演奏されるが、どれも同じような演奏。その中で15年のメータは傑出していた。
- 「芸術家の生涯」作品316
- ★クライバー(89)、マゼール(99)、小澤(02)、ヤンソンス(06)、ティーレマン(19)
- 「ウィーンの森の物語」作品325
- メータ(90)、☆マゼール(94)、★マゼール(99)、マゼール(05)、☆バレンボイム(14)、ムーティ(18)
- マゼールによる94年、05年の演奏は、序奏と後奏で指揮者自らがヴァイオリンを弾いている
- 「酒、女、歌」作品333
- ボスコフスキー(79)、★ムーティ(00)、プレートル(10)、メータ(15)
- 「人生を楽しめ」作品340
- アバド(88)、ムーティ(97)、★プレートル(08)、ヤンソンス(12)、ネルソンズ(20)
- 「千夜一夜物語」作品346
- クライバー(92)、マゼール(05)、☆ドュダメル(17)、バレンボイム(22)
- 「ウィーン気質」作品354
- ★メータ(90)、小澤(02)
- 「我が家で」作品361
- ボスコフスキー(79)、クライバー(89)
- 「レモンの花咲くところ」作品364
- アバド(88)、ムーティ(93)、ウェルザー=メスト(13)、ネルソンズ(20)
- 「南国のバラ」作品388
- ★メータ(98)、バレンボイム(09)、ムーティ(18)
- ニューイヤーコンサートではないが、ウィーン・フィルによる演奏はベームによるものが名演として記憶に残っている。
- 「北海の絵」作品390
- ★メータ(98)、☆マゼール(05)、ティーレマン(19)
- 「春の声」作品410
- ☆カラヤン(87)、クライバー(89)、ヤンソンス(06)、★ムーティ(21)
- 87年カラヤンの演奏では、ソプラノ独唱にバトルが起用されている。
- 「入り江のワルツ」作品411
- マゼール(96)、ムーティ(00)、ヤンソンス(06)
- 「宝のワルツ」作品418
- アーノンクール(03)、バレンボイム(09)、★ヤンソンス(16)
- 「皇帝円舞曲」作品437
- カラヤン(87)、アバド(91)、マゼール(96)、★アーノンクール(03)、プレートル(08)、ヤンソンス(16)、ムーティ(21)
- 「もろびと手をとり」作品443
- アバド(88)、アーノンクール(01)、★バレンボイム(14)、ネルソンズ(20)
私の好きな作品は、「ウィーンの森の物語」と「女、酒、歌」である。ともに長い序奏が付けられているが、後者の序奏が古い演奏では省略されていた。一方、前者の序奏には主にツィターの味わい深いメロディーが印象的であり、この部分を他の楽器で弾かれると、私としては興がそがれる思いがする。
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