2020年1月15日水曜日

モーツァルト:交響曲第29番イ長調K201(186a)(ヨス・ファン・インマゼール指揮アニマ・エテルナ)

関連する書物によれば、交響曲第29番の楽器編成はとても簡潔で、わずかにオーボエとホルンが2本ずつ。トランペットやティンパニどころかフルートもない。にもかかわらずこの今日に使われた表現は多彩である。数々の仕掛けによって聞くものを飽きさせないその作風は、丸でハイドンの交響曲を聞くようで楽しい。

まず第1楽章アレグロ・モデラートは2拍子。ほとばしる旋律は、室内楽的精緻さを持って高速に演奏されて欲しい。屈託のない明るさにも、ほんのりとした成熟が感じられる。イタリア様式とウィーン古典派がここで見事に融合し、後年の作品へと続くモーツァルトの作風が早くも完成の域に到達しているのを目の当たりにする。

ブルーノ・ワルターはこの曲を、決して遅くは演奏していない。その流儀に従えば、現在望み得る最も完成度の高い演奏のひとつが、ヨス・ファン・インマゼールによるものと思われる。けれども第2楽章では、どの演奏も同じような速度となる。エレガントで静かな音楽は、丸で宮殿で催される舞踏会の如きである。

物静かなにステップを踏む何組かのカップルの姿を想像する。いつ終わるともわからないほど、のんびりと長く続くが、時にオーボエが長く音を引き延ばして印象的である。そのオーボエはこの楽章の最後で、思い切り大きく吹くのが丸で舞踏会の終わりを告げる合図のように聞こえる。間髪を入れず、舞踏会は終わる。

全体の程よいアクセントとなっている第3楽章の比較的短いメヌエットを経て、いよいよ第4楽章。アレグロ・コン・スピリートは速い6/8拍子。ここで聞き手は再びモーツァルトの類稀な才能に唖然とするだろう。メロディーはいよいよ緊張を伴ったまま休止。すぐにほとばしるアンサンブル。その合間をホルンとオーボエが駆けめぐる。簡単なメロディーに聞こえるが、実に多彩な表現で飽きることが内。

古楽器風の演奏で聞くとさらに新鮮でスポーティ。心地よい時間に身を委ねていると、そのフレーズが何度か繰り返されていくうちコーダとなる。モーツァルトにしては凝った終わり方をするのも興味深い。

このような凝った作品は、やや癖のある演奏で聞くと面白い。実際、ニクラウス・アーノンクールとコンセルトヘボウ管弦楽団による演奏が気にいっていたが、これをさらに進化させたようなインマゼールの演奏は、2つのヴァイオリン協奏曲とともに録音され、あまり目立たない存在だが掘り出し物の一枚となっている。

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