EMIから発売されていたそのCDは録音がややぎこちなく、田舎のオーケストラをのせいか、とてもローカルな雰囲気が漂っていた。「カレリア組曲」の行進曲などは、丸でチンチン電車に揺られるかの如き趣である。だが、そこが私のお気に入りとなった。このディスクには、「フィンランディア」「カレリア」組曲のほかに、劇付随音楽「死」から改編された有名な「悲しきワルツ」、「ポホヨラの娘」、それに組曲「レミンカイネン」から「レミンカイネンの帰還」が収録されていた。特に「レミンカイネンの帰還」は有名な「トゥオネラの白鳥」を含む一時間近くある全曲の最後の曲で、その後私はこの作品を通しで聴いて感動し、全曲盤を購入するきっかけとなった。
このCDにはシベリウス作品の、いわば王道とも言うべき作品群が収められているのだが、もちろん、これ以外にもたくさんの作品がある。それらに実演で触れる機会は、残念ながら皆無に等しい。しかし私と同様、いつも同じ曲ばかり聴いていたのではつまらないと感じるリスナーが、全世界に一定数いるのだろう。新たに目にした一枚は、私が持っている唯一のシベリウス管弦楽曲集の選曲を巧妙に避けていた。特に私は、バルビローリのCDにはなかった「エン・サガ(伝説)」という。20分あまりの曲が聞きたかった。シベリウスの管弦楽作品は、この曲のように北欧の伝説を題材に取ったものが多いが、その中でも最初期のものである。この曲を初めて聞いた時は、何かドラマの主題歌のように感じられた。
この曲を最初に収録したCDが目に留まって聞いてみたら、なんと「悲しきワルツ」以外はバルビローリ盤との重複がないのである。このようにして私はまた新しいシベリウス作品集を手に入れた。これはシベリウスのスペシャリストとして2度も交響曲全集を録音しているリトアニア生まれの重鎮ネーメ・ヤルヴィが、スウェーデンの地方都市にあるエーテボリ交響楽団を指揮したドイツ・グラモフォン盤である。定評のあるヤルヴィだからこそ、こういった企画が可能だったのかもしれない。初めて触れる曲、例えば「ロマンチックなワルツ」や「春の歌」のような親しみやすい曲の魅力もさることながら、このディスクの最大の聞かせどころは「タピオラ」である。「レミンカイネン」も「ポホヨラ」も「クレルヴォ」も、いずれもフィンランド最大の民族叙事詩「カレワラ」から採られている。この叙事詩からの作曲は、シベリウスのいわばライフワークと言っても良かったのではないか。それらの中でも、晩年に作曲された「タピオラ」は1925年の作品で、これ以降には主要な作品は作られていない。「最高傑作」とも言われるこの20分足らずの作品を、今回私は初めて聞いた。凝縮された、濃厚な音楽は時に荘厳で格調高いが、決して楽しい感じのする作品ではなく、交響曲の一部を聞いているようである。それでも北欧の自然を見るようなシーンの連続で、飽きることはない。交響曲第6番や第7番と並行して作曲されたようで、いわばシベリウス音楽の最高地点のような作品である。
今年も長かった梅雨がようやく明けた。梅雨末期から早くも続く猛暑、酷暑の中で、私はシベリウスに耳を傾けている。夏でも爽やかな北欧の作品を聞けば、少しは涼しく感じられるからというわけではない。むしろヤルヴィの厚ぼったい演奏は、まるでセーターを着ているようである。一方、バルビローリの素朴な演奏は、北部イングランドの湖水地方のイメージしながら聞いている。
2. 「カレリア」組曲作品11
3. 交響詩「ポヒヨラの娘」作品49
4. 「悲しきワルツ」作品44-1
5. レンミンカイネンの帰郷
1. 交響詩「エン・サガ(伝説)」作品9
2. 交響詩「春の歌」作品16
3. 「悲しきワルツ」作品44-1
4. 「鶴のいる情景」 作品44-2
5. 「カンツォネッタ」作品62a
6. 「ロマンティックなワルツ」作品62b
7. 交響詩「吟遊詩人」作品64
8. 交響詩「タピオラ」作品112
0 件のコメント:
コメントを投稿