メンデルスゾーンの珍しい序曲ばかりを集めたこのCDは、ネヴィル・マリナーが指揮し、手兵のアカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズが演奏しているなので悪かろうはずがない。そして聞いてみて最初に思うのは、その録音の良さである。94年の録音だからそれほど新しいわけではないし、SACDでもない。だがそれに匹敵するような出来栄えで、聞く者を嬉しさで包むことは請け合いである。収録曲は順に、
トランペット序曲ハ長調作品101
オラトリオ「パウロ」作品36より序曲
序曲「ルイ・ブラス」作品95
歌劇「異国よりの帰郷」作品89より序曲
歌劇「カマチョの結婚」作品10より序曲
吹奏楽のための序曲ハ長調作品24
序曲「美しいメルジーネの物語」作品32
序曲「海の静けさと幸ある航海」作品27
となっている。この中では有名な「美しいメルジーネの物語」がとてもいいと思ったが、演奏の出来不出来に差はない。一方で録音され過ぎた「真夏の夜の夢」や「フィンガルの洞窟」などが収められていないのも、重複を避けたいコレクターとしては嬉しい。
ロマン派の作曲家が残した序曲としては、シューベルトやウェーバーなどどれも素敵な作品が多いが、メンデルスゾーンも例外ではない。そして序曲集はメンデルスゾーンの特徴がよく表れているとも思う。明るく陽気で、そして力強い。ロマン派でありながらも古典的な形式美を残しているところに加え、マリナーの指揮がきびきびと引き締まっているので、音楽に推進力がある。珍しい曲が同じように続くCDであるにもかかわらず、なぜか時々聞きたくなるようなCDである。何度か聞いていくうちに、音楽に親しみが沸いてきて、耳に馴染んでくるのが不思議な感覚だった。
ところでこの素晴らしいCD、Capriccioというレーベルから発売されていたのだが、その後倒産し、今では廃盤である。どのようにしたら入手できるのか、よくわからない。
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