2014年5月9日金曜日

メンデルスゾーン:交響曲第1番ハ短調作品11(アンドリュー・リットン指揮ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団)

あるときふとしたことからメンデルスゾーンの伝記を読んでみたくなった。そこでさっそくAmazonなどで検索実行してみたのだが、予想に反してなかなか見当たらない。ショパンやモーツァルト、それにマーラーなどは、数えきれないくらいに関連本が発売されているというのに。中古にもいいのがないようだし、よほど古い本になると、それが手に入るか甚だ難しいと言わざるを得ない。

図書館をあたろうかと思ったのだが、その前に、いわゆるクラシック音楽ガイドのような本(これは非常にたくさんある。だが、どれも深みに欠ける)でメンデルスゾーンの項目を見てみた。やはりどれも同じような曲の解説しか載っていない。そもそもなぜメンデルスゾーンに興味を覚えたか、それはこのディスクを聞いたからである。

アンドリュー・リットンという指揮者は私がニューヨークに滞在していたころに、当時の手兵ダラス交響楽団を指揮して素晴らしいピアノ協奏曲(たしかラフマニノフだったか)を聞かせてくれた指揮者だ。これはその時の、1年で50回を下らなかった私のコンサート記録の中でも、とりわけ印象深いものとして記憶しているものだ(ピアノ独奏はアンドレ・ワッツだ)。

そのリットンが北欧のオーケストラであるベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してのメンデルスゾーン全集が2009年頃からリリースされ、なかなか評判がいい。私が最初に買ったのが、そのうちの交響曲第1番、第4番「イタリア」などを収めた1枚で、そこで私は初めて交響曲第1番ハ短調なる作品を聞くことになったのだが、これがまた素敵にいいのである。

例によってiPodに入れて、夕方に公園などで聞くことにしている。初夏の真っ青な夏空の下で、耳元で響く若いメンデルスゾーンの音楽が、何とも溌剌として心地よいのである。それもそのはずで、この交響曲第1番は1824年の作品である。それはこの早熟な作曲家が1809年に誕生してからわずか15年しかたっていないことを意味する。さらにこの時、ベートーヴェンがまだ存命である。

この曲は、私が持つメンデルスゾーンの作品のコレクション中でももっとも早い作曲の作品である。私はシューベルトなどの初期ロマン派の作曲家の、それも初期の作品を最近良く聞くのさが、そこでメンデルスゾーンが急浮上した。メンデルスゾーン、なかなかいいのである!

歌心のある人はもちろん、多感な青春時代を送った人なら、このような明るくも少し感傷的な作品に、十分心奪われるはずである。私などこれを機会に他のメンデルスゾーンの作品を聞いてみようか、などと思い立ち、そして冒頭の伝記検索につながったのだから。けれどもドイツにおいて、ナチスの時代にメンデルスゾーンの音楽は不当な扱いを受けた。そのことが冒頭で述べたメンデルスゾーンの情報の少なさに繋がっている。我が国においても、メンデルスゾーンを研究している人は極めて少ないのではないだろうか。

第1楽章の生き生きとしたメロディーには、早熟ながらもストレートな感性を羨ましく思うし、第2楽章の美しいメロディーには若い日々の特権のようなものを感じる。第4楽章の推進力は、やはり勢いがあって、エネルギーが充満している。だが、この作品が出来そこないのような作品かと言えば、少なくともこのリットンのしっかりとした演奏で聞く限り、ほとんどそうは思えない。

と、ここまで書いて、私は自分のコレクションにこれよりも前に作曲された作品があることを発見した!次回はその作品を取り上げることにする。なお、DSD方式でSACD化された本ディスクは、現在手に入るメンデルスゾーンのディスクの中でも、もっとも新しい部類であると同時に、その出来栄えは最高水準に達している。数えきれないくらいの演奏がひしめく第4番「イタリア」もかなりいいが、私は初めて聞いて好きになった第1番と、そしてやはりこれも初めて聞いた序曲「ルイ・ブラス」が、発見に満ち、多分に聞きごたえがあったことを記録しておきたい。

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