カタ・ヤニ・ビーチは中央にClubMedが居座っており、その北側はカロン・ビーチへと続いている。一方南側はいくつかのホテルが海に面して建っており、レストランも多い。どういうわけかここにはイタリア人が多い。ただビーチそのものは少し混雑しており、素朴な味わいはない。レストラン脇の急坂を登る。途中フルーツを売る店があって、そこでパイナップルやランブータンなどを買い込む。ジュースを作ってもらうのもいい。そしてバイクやタクシーが行きかう自動車道を歩くこと10分ほどで、カタ・ノイ・ビーチへと下る階段に到着した。ここから足元に注意しながら、ビーチを目指して下りてゆく。サンダルに砂が入り痛いが、そんなことよりこれを帰りに上らないといけないかと思うと、ややうんざりする。
ここのホテルに泊まっている場合には、カタ・ノイ・ビーチはそばである。だがビーチにはホテルしかないように感じられ、あの田舎の風情を醸し出すタイの海岸風景は見られない。ビーチの波は高く、少し危険なほどである。総じていえば、広々としたバンタオ・ビーチには劣るだろうか。少なくとも私にはそう思われた。
強い日差しを避けるためのビーチ・パラソルは安価で借りることができるのだが、どういうわけかデッキ・チェアがない。貸してくれるのは日よけのパラソルと大きなバスタオルだけである。砂の上にタオルを敷いて、その上に寝なければならない。これはアジア的であるとも言えるが、世界中どこのリゾートへ行っても共通のデッキ・チェアがないのはどうしてなのか。そして驚くべくことにカタ・ビーチのすべて、いやあのパトン・ビーチを含むすべてのプーケットのビーチからデッキ・チェアが消えてしまったというのである。
2015年に始まった軍政による統制の強化で、デッキ・チェアなどを貸し出す土産物屋などの業者の既得権益を締め出そうとした、というのが噂である。だがそんなことによって、あのプーケットのビーチを訪れる世界中の観光客は、今や絶望感にとらわれているような気がした。このような愚策はいつまで続くのかわからない。だがタイのことである。いつか急に再開されるのではないかと思っている。
カタ・ビーチからカロン・ビーチに続くエリアの方が私には気に入っている。確かに海は遠浅で広く、特にClub Medあたりが最も素晴らしいようには思う。だが安いタイ・レストランやマッサージ店は見当たらない。時折アイスクリームなどを売りに来る物売りを眺めながら、ビーチ・バレーに興じる世界各国の若者の歓声に耳を傾けている。4年前と違い、2016年の新年は快晴の天候が続いた。どこかヨーロッパのリゾートにいるような雰囲気がここの特長である。けれどもタイの風情を求めている向きには若干期待外れであることも事実だ。数多くあるプーケットの西海岸に、そのような落ち着いた風情を求めることはできないのかも知れない。バンタオ・ビーチのそれは、一見地元風ではあったが、実際のところはそれ自体が観光客向けであった。でもまだそのほうが、私にとっては有難かった。
まだ滞在したことのないスリンあたりのビーチなら、もう少し良いのかも知れないのかなあ、などと想像しながら、私は暮れてゆく南国の夕暮れを楽しんだ。実用的な話をひとつ。ここには訪問客向けの施設、すなわち「海の家」に相当するものはない。シャワーやトイレは1か所、駐車場の中にあった(有料)。だからビーチに面したホテルに限る、と思った。それなら水着のまま海へ行ける。そしてシャワーはホテルのものを使えばいいし、プールに飛び込んでもいい。カタやカロンのビーチは、ホテルが大通りを隔てて建っている。バンタオのラグーナ地区のビーチでは、ほとんどゲスト専用のビーチのようになっており、混雑もない。ただバンタオ・ビーチの問題は、街に遠いことだろう。屋台や土産物屋の類は、たとえ同じものしか売っていないとしても、長い夜の楽しみである。カタにはそれが、まだあるにはある。
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