2016年10月27日木曜日

プーケットへの旅(2015)ー⑥付近のレストラン

2回目のプーケット滞在も残りあと1日となって、私たち家族は、最後のディナーとショッピングに出かけた。行先はカタ・ビーチから少し北のカロン・ビーチ。そこの土産物屋などを物色しながら南下する。トゥクトゥクに乗って数十分で、私たちはカロン・ビーチの中心部にある時計台のロータリーに到着した。ここのホテルが沢山並んでいるエリアでチキンなどを食べたのだが、これが非常に西洋風。ここで触れることのできるタイの文化は、どこまでも西洋化されている。それもまたオリジナルだとは思うが、オーセンティックなタイ文化ではない。

カタ・ビーチのホテルそばにあるレストランもまた、タイであってタイでない、という独特のものだ。例えば私たちはある日、TripAdvisorで高評価のタイ・レストランが、ホテルから歩いてわずが10分の距離にあることを知り、予約もせずに出かけた。予約がない客としては最後の一席が、そこのイギリス人のオーナーによって私たちに割り当てられたが、この小さなレストランは山へと向かう狭い通りの脇にあって、景色が良いわけでもなければ交通が便利でもない。ところがここに大勢の客(西洋人だ)が押し寄せるのだ。

同様のレストランがその向かいあたりにある。このレストランは何とトルコ料理店で、見た感じではさびれたレストランである。倉庫を改造したような小さな店は、連日満員で私たちは予約がないため、諦めざるを得なかった。口コミで最高評価という触れ込みからは想像できない、小さくてぼろいレストランであった。

ホテルの隣にはイタリア人の経営する小さなホテルがあって、ここの1階がイタリアン・レストランである。そこでピザやスパゲッティなどを注文し、ビールとともにひとときを過ごしたが、このとき食べたカルボナーラの味が忘れられない。

タイであってタイでない、というのがプーケットだが、その中でもカタ、カロンの界隈は、その西洋化のレベルにおいて他を抜いている。それが好きならそれでも良いが、タイらしさを求める向きには拍子抜けである。物価も高い。

カタより南のビーチもおそらくは、似たような側面があるのだろう。だがそれらはもっと静かで、そして自然が豊かである。ところがこれらのビーチは、どこに行くに不便である。空港からも遠い。

パトンがプーケットのもっとも猥雑な街であって、その光景は私にとってもはや南国のリゾート感を味わわせてはくれないと思われる。ホテルが繁華街に近く、そういう意味では便利だが、海は混んでいてリラックスできないことは容易に想像がつく。

バンタオ・ビーチは私の感覚では、おそらくもっとも素敵なところで、人は少なく海岸は広い。けれどもそこはそこで、パトンのような猥雑さを嫌う向きが多いというだけで、タイの味わいを残しているようには見えるが、物価は一流である。そしてラグーナ地区こそその最たるもので、ここに泊まると静かでのんびりとした時間を味わうことはできるだろうが、近くには何もない。

残るはスリンとカマラの2つである。私は次回プーケットに出かけるときには、このエリアに滞在しようと思った。西海岸のラインに沿って空港から南へと再び目を走らせてみる。どこも素敵なビーチに見えるが、開発され過ぎて素朴な味わいがないところが多い。プーケットをよく知る外国人は、いまやクラビーやカオラックに向かい、ピピ島にまで高級リゾートができてしまった。東南アジアのリゾート化の流れはいつの間にかミャンマーやカンボジアにまで及び、ベトナムのニャチャンなどはタイと引けを取らないほどに高級な場所となっている。ロシア人は言うに及ばず、中国やシンガポールなどに住むリッチな人々がこれらのリゾートを席巻してしまったので、今や日本人はあまり見かけない。いや日本人は今でも、短期滞在、アクティビティを欠かさない多忙な観光に明け暮れている。快適さとサーヴィスへのこだわりが強すぎて、かえって楽しめないにもかかわらず、安いというだけの理由で雨季に滞在したたりする。

日本へ戻る日の夕方を、カタ・ビーチで過ごしながら、そこで催されるビーチ・バレーを眺めていた。タイ人もいれば、ヨーロッパ人もいる。みな楽しそうに歓声を聞きながら、暮れてゆく海を眺めていた。静かな時間がゆっくりと過ぎること。これが最大の楽しみである。いかに西洋化されようと、その時間感覚と明るく暖かい気候、それに静けさは、日本の都会にないものだ。そうである限り、私はまたプーケットに来たいと思う。さわやかな風がそうっと吹いてきて、木々を揺らした。一番星が山の頂にあるブッダのそばで瞬き始める頃、新しい年の静かな一日が今日も終わろうとしていた。

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