2019年1月15日火曜日

YAMAHAのネットワークプレイヤー NP-S303

CDプレイヤーの買い替えと同時に、私はネットワーク・プレイヤーについても検討を余儀なくされた。7年以上使用してきたPioneerのN-30は、とうとうあまり真価を発揮しないままその役割を終えることになる。入手当初からiPad等を使用した制御に問題があり、それはここにきてとうとう致命的な症状を呈し始めていた。しかもこの機種は、Wifiに対応していないという問題点があった。

音質を重視するオーディオ環境において、技術進歩の激しいネットワーク部分を切り離している点は理解できる。けれどもそのPioneerだって後続の機種はWifiに対応している。なぜWifiでなければいかねいか、という点は、少し説明を要する。有線接続するためには、我が家のステレオの配置状況から、無線ルーターを子供の頭の近くに配置しなければならず、それは避けたいからだ。N-30を無線化するには、イーサネット・アダプターを購入する必要があった。

いっそN-30を実家に譲り、インターネットラジオ専用機とでもして使用してもらい、新しくネットワーク・プレイヤーを購入することにした。もっとも実家においてもWifi環境は必要で、このため結局私はイーサネットアダプターを購入して、一度N-30に接続し、動作確認をすることまでした。

Pioneerのコントロールアプリの操作性は、よく言われているように極めて悪く、そのため私は満足にネットワーク環境での音楽を楽しんでいない。それでもこれまで我慢してきたのは、子供がまだ小さく、家も狭いので、それだけのゆとりがなかったからだ。しかし子供が中学生になり、もうその必要はなくなった。丁度その時に、我が家のオーディオ機器は一気に故障を始めた、と言っていい。

ネットワーク・オーディオは大きく分けて2つの形態があるとされる。ひとつはPCからDAC経由でアンプに接続する形態。もう一つはNASからネットワーク・プレイヤーに接続し、PCなしで音源を再生するというものである。私は後者を目指したが、NASも故障したので、結局中途半端な状態でこの危機を迎えた。NASは寿命が短い上に、結構な値段がする。このためCDプレイヤーの方が断然コストパフォーマンスが高いのだが、それはこの際、問題にできない。問題はネットワーク・プレイヤーを買いなおすだけの価値があるのか、ということだった。

ネットワーク・プレイヤーを使用する大きな目的は、ハイレゾ音源、すなわちCDを上回る規格の音源を再生することにある。だがこの趣向は一向に流行の兆しが見えない。それどころか、そもそも音源をメディアとして購入し、手元に置いて置くことが時代遅れになりつつあるのだ。

実はそのことを知ったのは、ネットワーク・プレイヤーを買いなおしてからである。新しいネットワーク・プレイヤーに搭載された聞き放題の音楽配信サービス対応機能が、このことを私に気付かせたのは皮肉なことだった。今ではインターネット・ラジオとSportifyが私の音楽生活の基盤となりつつある。このことはあとで詳述する。

そういうわけで、一向に流行る兆しのないネットワーク・プレイヤーの中でも、安定した評価と手ごろな価格を持つYAMAHAのNP-S303を購入することになった。色はシルバー。もちろんWifi対応である。パネルには必要最小限の液晶のみが表示され、かさばることもなく、コントロール・アプリも使いやすい。

NP-S303にはSportifyとDeezerという2種類の音楽配信サイトに対応しており、DeezerというのはCDと同じ品質の配信として注目されている。しかしながら、曲の合間の空白部分をなくす、いわゆるギャップレス再生ができず、クラシックファンとしては致命的である(2018年末現在)。一方、Sportifyは十分な量の音楽と豊富なプレイリストを備え、しかも安い。広告を聞くことにすれば何と無料というオプションもあるのだが、高音質設定ができず、しかもシャッフル再生しかできない。これもクラシックの聞き手には問題がある。従ってSportifyはPremium会員となる必要がある。幸い昨年末まで、3か月100円というプロモーション・キャンペーンを展開していたため、迷わずこの特典を利用することにした。

さて、NP-S303にはradikoをそのまま再生することもでき(音質は非常に悪い)、さらにはUSBメモリやAirPlay、Bluetoothにも対応している。専門的な観点では、DSDの再生ができないといった点はあるが、私の場合これは問題ではない。むしろコントロールアプリによって好きなインターネットラジオ局を登録しておき、スイッチ一つでバイエルン放送協会やWQXR、あるいはClassicFMなどの世界のクラシック専門FM局に接続できることが何よりうれしい。

NASも一応買いなおして、リッピングしたCD音源をPCなしで再生することにしたいし(そうすれば外出先からでもスマホで自分の音楽ライブラリにアクセスできる)、楽しみは広がるのだが、現時点ではまだそこまで試してはいない。

NP-S303購入はこのように私のオーディオ生活を再建し、一気に豊かなものにした。問題は音楽を聞くだけの時間的な余裕が、(少しできたとはいえ)まだまだ少ないことだ。だがそれは、仕方がないことだ。

ところで実家に送付したN-30は、とうとう致命的な故障をしてしまった。取説によれば、これには修理が必要で、その費用も数万円に上ると予想されている。衝撃が加わったからなのか、どうかはよくわからない。私はなんとなく、最初から壊れる傾向にあったと考えている。インターネット・アダプターまで購入したにもかかわらず、その投資に見合うだけの効果が得られないうちに、計画が頓挫してしまった。私にできたことはiPadのステレオミニ・プラグ端子からそのままアンプに接続し、TuneinRadioなどのアプリをそのまま鳴らすことだけだった(これでは豊かな音量は得られず、音質も悪い)。

お正月元旦の日本橋を私はミナミのビック・カメラを目指して歩き回り、そこでChromecastを購入することになる。Chromecastにはオーディオ版も発売されており、それを使えばネットワーク・プレイヤーなどなくても音楽配信サービスやインターネット・ラジオが聞けるようになることが判明する。これもまた皮肉なことに、N-30の故障がもたらした新たな展開であった。Chromecastについては、またあとで書くことにしようと思う。

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