2020年5月10日日曜日

ウェーバー:交響曲第1番ハ長調作品19(J50)、第2番ハ長調J51(ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン放送交響楽団)

1786年生まれのカール・マリア・フォン・ウェーバーは、1770年生まれのベートーヴェンよりも16歳年上ということになるが、ベートーヴェンは古典派に属し、ウェーバーは初期ロマン派に属すると分類されている。だがもちろん、作曲された曲の多くが同時代であるし、ウェーバーの初期の作品はベートーヴェンの晩年の作品より前に作曲されている。

ウェーバーが20歳の時に作曲された交響曲第1番ハ長調は、1807年に完成しているが、この時期にベートーヴェンはハ短調交響曲(第5番)などを手掛けているころだから、まだまだということになる。しかも驚くべきことに77歳まで生きたハイドン(1809年没)はまだ存命である。

ハイドン、モーツァルトやベートーヴェンが今日、ドイツの国境を越えて国際的な作曲家としての地位を確立しているのに対し、ウェーバーはどちらかというとドイツの国内に閉じた作品を書いたローカルな作曲家と思われている。ヨーロッパ中で一世を風靡した歌劇「魔弾の射手」でさえ、今日ではドイツ以外で上演されることはまれである。ましてやその他の作品となると、インターナショナルなリリースをされる録音もめっきり少ないのが実情である。

ウェーバーの若き日の作品、交響曲第1番と第2番もまた、録音は非常に少ない。 交響曲第1番ハ長調は、青年ならではの瑞々しい感性の中に、伸びやかである。第1楽章はモーツァルトの交響曲第31番ニ長調を参考にしていると言われている。そう言われて聞いてみたら、冒頭はなんとなく似ていなくもないが、でもやはり違う。そして、少しゆっくりになったりすると、そこは演奏のせいかもしれないのだけれども、旋律が歌うようなメロディーになっていく。

音が隣のすぐ上の音に移る。歌謡性のメロディーはシューベルトにおいて一気に開花するが、ウェーバーの音楽の魅力はそんなロマン性と古典派の骨格との同居である。その傾向は第1楽章で顕著だが、第2楽章になると、いっそうロマン性が深まるのもこの曲の特徴である。オーボエが、フルートが、弦楽器が、深々とした旋律を歌ったかと思うと、そこに古典派の和音が鳴り響く。

一方、第3楽章と第4楽章は初めて聞いた時、ハイドンのザロモン交響曲を聞いているのではないか、とさえ思うような感覚に囚われた。特に第3楽章はスケルツォとされているが、メヌエットと言ってもいいかもしれないようなムードである。

交響曲第2番ハ長調は、第1番とほぼ同時期に作曲された。聞いた印象では第1番以上に古典的で、どちらかというと第1番の方が充実した曲のように思える。第3楽章は短調だが、トリオの部分で長調に転じる。このあたりのはっきりとしたメヌエットの形式は、同じ3拍子の第4楽章とともに、どこかのんびりしている。そして何ともあっさりと終わってしまう。これらの交響曲はウェーバーがまだ若いころの作品で、数あるウェーバーの作品の中では地味である。

今となっては懐かしいドイツの巨匠サヴァリッシュは、ウェーバーの2つのハ長調交響曲を、壮大で骨格のある大きな交響曲として演奏している。聞き比べたわけではないのでほかの演奏がどうなのかはわからないが、サヴァリッシュはテンポを落としてじっくり聞かせている。ウェーバーのロマン性に焦点を当てているように思える。オルフェオがリリースした当CDの録音は、1983年10月ヘラクレスザールとクレジットされている。

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