2023年10月9日月曜日

finalのBruetoothイヤホンZE3000

新しいオーディオ機器を購入するたびに、音楽の新しい発見を楽しむことができる。アンプやスピーカーだけでなく、それは数千円のイヤホンにも言える。聞き古した音楽も新しい機器で再生すると、丸で別の演奏であるかのように感じることが多い。気に入った機器で久しぶりに聞く音楽は、とても新鮮である。そういう嬉しさがあるものだから、私はたまにオーディオ機器の記事を書いてきた。もっとも私はあまりお金をかけない主義だから、高級なものとは無縁である。飽きたり、失くしたり(ポータブル機器の場合)、気に入らないものを間違って買ってしまうリスクを低減するために、できるだけ安価な機種でそこそこの効果が期待できるという場合にのみ、オーディオ機器を買い替えている。

このようにして数年に一度は記事を書いてきたが、コロナ禍に見舞われたここ数年は、イヤホンを始めとするポータブル機器の視聴にも支障があった。加えて最近は機器を店頭で試す場合、いろいろとややこしい設定を行う必要があり、なかなか簡単に行えない。こういうことから、それまでのように手軽に、様々な音源で視聴を繰り返すことが難しくなってしまったのである。

イヤホンは従来の有線タイプに加え、ワイヤレス型のものが出回って久しい。私も発売当初からBruetooth型のイヤホンを試したきた。ところがまだ技術が未熟だったせいだろうか、これがちっとも良くなかったのである。同期(ペアリングという)に手間取ることがしばしば。当初のものは、耳にのみ装着するタイプはなく、途切れた有線タイプか首に巻くタイプのものであった。しかも全くもって音質の点で満足が行くことはなかった。

ところが私のスマートフォンを買い替える時期が到来し、とうとうステレオ・ミニジャック付きのものでなくなってしまったのである。それまでは音がいいという触れ込みで買わされたSONYのスマートフォン(Xperia)を使おうとしたが、イヤホンはおろかスピーカーで聞く音もあまりに酷かった。それでも中クラスの機種で、それなりの値段がしたにもかかわらずだ。結局、前に買って持っていた中国製(本命はHuaweiだったがこれが買えなくなり、仕方なくOPPOというメーカーのものだった)にSIMカードを差し戻した。満足するには程遠いものではあっが、それでもXperiaよりはましだった。端末の分割支払い契約は最低でも2年あり、私はその間我慢を強いられた。

スマートフォンで聞く音楽には限界があると思った。そもそもイヤホン用のアンプにさほどこだわって作られていないのではないか。そこでBruitooth型のイヤホンの登場となるのだが、これは実のところ有線でのイヤホンに勝るということはない、というのが今もって通説だ。スマホの音質設計の悪さは、DA変換とアンプを耳元に移すことで解決すると思われたのだが、満足の行く音質を辛うじて確保するには、3万円以上の費用が必要と判明した。

もっともSONYは同様の音質重視ユーザーの意見を取り上げるだけの器量は、いまでも健在であるかのように思う。Walkmanの新型モデルはネット対応で、私のようなSpotify会員なら専用機で高音質のストリーミングが楽しめるという謳い文句である。旧機種に比べると電池の持ちがいいとも評判で、これを買おうかと悩んだ。しかしXperiaの経験があるせいで私はSONYにいささか懐疑的であり、スマホとは別に専用機を持つ面倒と、ネット対応とは言え音源はいったんダウンロードする必要があること、それだけのためにAndroidを搭載するというのもいかにも大袈裟であることなどから購入に躊躇したのである。

結局Xperiaの2年契約が終わる今月になって、ようやく私のスマホ生活に変化が訪れた。新しい機種をSONYとOPPO以外のメーカーから選択する必要があった。そして私の契約する通信会社において比較的有利な条件で手に入る機種は、SAMSUNG製(Galaxy)の古いモデルに限られた。Galaxyは初めてである。しかも店員に聞くと今もって音はSONYがいいと言ってくる。ついでにいえばカメラもXperiaがいいと言う人が多いが、これにも私はまったく同意しない。そういう経緯により、私の新しいスマホは韓国製となった。そこにはもはやステレオ・ミニジャックは付いていない。Type-Cのインターフェースから有線接続のイヤホンを使うには、2つの方法がある。ひとつはType-Cのプラグを持つ有線イヤホンを購入すること。しかしこれは選択肢が非常に狭い。今一つの方法は、Type-Cをステレオ・ミニプラグに変換するコードを介して接続する方法である。しかしこのようにつなぐと充電しながら聞くことができない。iPhoneと同じ悩みである。

いよいよ世の中は、携帯音楽プレイヤー(それはすなわちスマホのことだ)で聞くイヤホンがBruetooth型に集約されつつある。この間に技術が向上し、少しは音質が良くなったと信じて何かを購入することに決め、いつもの量販店へ赴いたのはスマホ購入の翌日であった。まずはType-Cからステレオ・ミニジャックに変換する短いコード(1700円もする)を購入し、同じ売り場でいくつかの機種を試すことにした。予め選択肢に入れた機種を小さい紙に書き写して持参し、外見や装着感などをみてから気に入ったものを買うつもりだった。予算は1万5千円以下。どれを選んで良いかわからない時には、Galaxy Buds2というものが丁度予算いっぱいの値段で売られているから、これにすることとした。言うまでもなくスマホとの相性を想定した結果である。

Bruitoothのバージョンは5.0以上であることが重要だが、これは今発売のものは満たしているだろう。問題はコーデックで、Androidの場合aptX対応であることが望ましい。こうなると機種が限られてくる。私がリストアップしたのは、以下のイヤホンである。

  • Galaxy Buds2
  • YAMAHA TW-E3C
  • final ag COTSUBU
  • Technics EAH-AZ40

客がいっぱいいても話しかけてこない暇そうにしている店員は、概ね知識に乏しく愛想が悪い。しかし休日の午後の売り場は客でごった返しているから、店員を捕まえることができればラッキーである。仕方がないから私は、同じ年代と思われる暇そうな店員にGalaxyのBuds2を見せてほしいと頼んだ。Buds2はショーケースの中にあって、出してもらえないと触ることもできない。その前に在庫はあるのはと聞いたら全色ありとのことだった。「試してみますか?」というので喜んでそのようにしたいと伝え、買ったばかりのGalaxyを取り出した。店員がショーケースの中から取り出して蓋を開けたとたん、私のスマホにペアリングのポップアップが表示されたのには驚いた。今ではとても簡単にペアリングできるらしい。

実際に聞いてみたGalaxy Buds2は悪い印象はなかったが、比較するものがない。ただ少し音量が小さいと感じた。Xperiaでもう懲りているから、音量の大きさは必須である。店員は比較のためにSONYの中級クラスとTechnicsの最新モデルEAH-AZ40M2を出してきた。私はSpotifyで今年のニューイヤーコンサートとモーツァルトのハイドン・セットなどを再生しながら、これらの機種を比較試聴した。そしてSONYのイヤホンは、いわゆるドンシャリで聞くに堪えないこと、さらにTechnicsはそこそこいい機種であることを発見した。ただ私の視聴したTechnicsのものはaptXに対応していなかった。

私が逐一所感を述べると、店員は次にCOTSUBUという機種を試すよう促し私もそれに従った。COTSUBUというのはその名の示す通り小さな筐体だった。おそらく耳の小さな女性向けといった印象で、丸みを帯びたやさしい音は6000円にしては悪くないのだが、高くてもいいからクラシック音楽に向いたもう少しいい音のするものが欲しい。YAMAHAも試してはみたがどこか決め手に欠ける。結局、再度Galaxy Busd2を聞いてそれに妥協しようとしたとき、店員はfinalというメーカーのZE3000という機種はどうですか、と聞いてきた。finelなどというメーカーは初めてである。聞くところによれば、日本のメーカーとのことである。なかなか親切な店員だったから、信じてそれを視聴させてもらうことになった。そして音楽が聞こえた瞬間、文字通り耳を疑ったのである。

finelのZE3000で聞く音楽は、それまでのどのイヤホンよりも安定感があってしかも適度な広がりがある洗練された音だった。中音域の伸びも非常に良く、ボーカルやバイオリンの音が惚れ惚れするし、音を大きくしても歪まないところが素晴らしい。私は驚嘆の意見を述べ、値段を聞いたら予算内の税込み1万5千円強とのことである(実際には10%のポイントもつく)。見るとその隣にはZE2000という同じラインナップの低位機種も並んでいてこちらは1万円。形状など見た目は同じでいったい何が違うのかと尋ねたら、聞いてみますか、ということになった。ZE2000もいい音がしたが、こちらはよりナチュラルな感じで、言い換えれば特徴がない。1万円もかけて買うイヤホンとしては、ZE3000の方がより立体感があって鳴りっぷりがいいと感じた。

さらに素晴らしいのは装着感が見事なことと、ボリュームが小さくても大きな音がすること。音の遮蔽性を確保して、その分ノイズキャンセリング機能が付いていないのは一種の見識だろうと思う(この機能は、使うと確実に音がおかしくなる)。イコライザーも専用アプリもないから、まさしく「この音を聞け」ということである。だが、その音たるや従来のBruitooth型イヤホンの限界を見事に突破していると言わざるを得ない。結局、私は1時間かけて何種類かを試した結果として、迷うことなくZE3000を選択した。帰宅していろいろ検索してみると、これは賞を受賞した優れもので多くの高評価を得ていることがわかった。

いま私はGalaxy A54 5Gにfinal ZE3000を接続してSpotifyを聞いている。これまでSpotifyのストリーミングの音質に限界を感じ妥協していたが、それはまだイヤホンとスマホの高度化によって改善の余地があったことが判明した。これまで聞いていた音楽が、旧い歌謡曲であっても素晴らしい再生音で蘇ってきた。アナログのレコードを聞いているかのようである。

そしてわかったことは、何と有線接続した従来の安物のイヤホンでも、なかなかいい音がすることである。これはスマホに搭載されたアンプが悪くないことを意味している。結局、4年前に不本意ながら買ったOPPOも、2年前に買うことを余儀なくされたSONYも、まったくもって酷い音質だったことは明らかだ。少なくともこのたび買ったSAMSUNGは、私を裏切らないばかりか、スマホ登場以前のごく普通の音のレベルを保証してくれた。そこにfinalのイヤホンを接続することで、これまで有線接続で聞いていた音楽プレイヤーの音に到達した。この4年間、私はスマホによる低レベルの音質を我慢する生活を余儀なくされていた。だが、ようやくそのトンネルから抜け出すことができたのだ。

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