2012年12月21日金曜日

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番ト長調作品44(P:ペテル・ヤブロンスキー、シャルル・デュトワ指揮フィルハーモニア管弦楽団)

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲がわざわざ「ホ短調」などというのは、ホ短調でないヴァイオリン協奏曲があるからだが、これと同様にチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番がある以上、第2番、そして第3番というのが存在する。だがそれはほとんど演奏されることがなく、従ってあまり知られていない。私はただ1回だけ、実演で聞いたことがあるだけだった。

そもそもピアノ協奏曲というジャンルは、ベートーヴェンがあの「皇帝」で華々しい冒頭を作曲してから、どの作曲家にとってもインパクトのある出だしの腕の見せ所といった感じで、大変に力の入った曲が多い。その中でもとりわけ大成功したのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番ではないかと思う。想定外の長さを誇る序奏は、一度聞いたら忘れられないが、その序奏の後半がまた大変ダイナミックで、これを聞いただけで満足し、何度も何度もそこの部分だけを聞いていた中学生時代を思い出す。

その序奏の素晴らしさをそれだけで終わらせないところが、第1番のまたいいところである。第2楽章を経て第3楽章のコーダまで、ピアノの聞かせどころが続く。さて、第2番はどうか。音楽の長さは第1番に引けを取らない。けれども冒頭の平凡なメロディーは、何か気の抜けたシャンパンのように虚しい。それだけで、あのチャイコフスキーは手を抜いたのか、などと思ってしまう。それでこの曲は恐ろしく人気がない。第2主題以降は少し持ち直すのだが。長い第1楽章を聞き続けるのが少し億劫だが、それでも紛れもなくチャイコフスキーのメロディーである。

第2楽章に入るとチェロの独奏が続いて、これはピアノ協奏曲ではなかったの?と思い始める。チェロ協奏曲ではないかと思いきや次に登場するのはヴァイオリン独奏で、ピアノも絡むのでこれは「ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための三重協奏曲」という感じだ。つまりピアノ・トリオの協奏曲の趣きである。ピアノはむしろ控えめでさえある。美しいメロディーで、ここの部分だけならいい曲だと思った。

第3楽章はそれなりに華やかで、長い曲はやっと終わるのだが、BGMのように聞く音楽としては悪くない。リストやラフマニノフの目立たないピアノ協奏曲に比べればむしろ好感の持てる曲も、やはり第1番の圧倒的な完成度に比べると分が悪い。これで演奏が平凡だと、ちょっとつらいかも知れない。私が聞いた実演は、チェルカスキーのピアノ、NHK交響楽団の伴奏で、なかなかの名演だった。今日聞いたCDはヤブロンスキーのピアノ。伴奏のデュトワは手を抜かない堅実な演奏で、この曲の魅力を知るには十分な演奏であると思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調作品102(Vn: ルノー・カピュソン、Vc: ゴーティエ・カピュソン、チョン・ミュンフン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)

ブラームスには2つのピアノ協奏曲、1つのヴァイオリン協奏曲のほかに、もう一つ協奏曲がある。それが「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」という曲である。ところがこの曲は作品番号が102であることからもわかるように、これはブラームス晩年の作品であり(54歳)、すでに歴史に残る4つの交...