「パリ交響曲」を聴き始めて「めんどり」「熊」の後は、名前なしの作品である。けれどもこの作品は意外に味わい深い。第1印象はとてもなめらかな曲だということ。比較的長い序奏は、静かにロマンチックである。少し重いなと感じ始めたら、第1主題が始まる。その何と流麗なこと。このメロディーを聞くと、どこかで聞いたことのあるような音楽のように思えてくる。
そうだ。これは紛れも無くシューベルトの雰囲気である。シューベルトとハイドンが同居している。実際にはお爺さんと孫ほどの年齢差があったと思うが、この作品はシューベルトの作風を先取りしているように思う。
流れに乗って第2楽章に入ると、Andanteの長いダンス風の音楽になる。だがここでもどこかシューベルト風。静かで叙情的な雰囲気は、風に乗って水原を行くかのよう。ちょっと長いので眠くなるが、音程が飛躍せずなめらかなのである。
短いメヌエットはきっちりとした曲だが、特に際立った特徴があるわけではないようだ。一方第4楽章のヴィヴァーチェでは再び快活な音楽である。全体に親しみやすく、目立たないが心地よい曲である。
演奏はシャルル・デュトワ指揮のモントリオール交響楽団(のメンバで構成される小規模な管弦楽団)で聞いてみた。このコンビの古典派作品は大変珍しく、私の記憶ではこれだけではないだろうか。モーツァルトもベートーヴェンも録音していないように思う(もちろんシューベルトも知らない)。だがより多くの刺激的な演奏に交じると、地味な存在であることは否めない。
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