
静かな序奏で始まる第1楽章は、よくあるハイドンの出だしだが、フレッシュで心地よい疾走感の主題が始まると、刺激的で幾分早めな速度が何とも心地よい。ハイドンの典型的な楽しさが、ここにも十分表れている。
第2楽章の静かにステップを踏む演奏も、最初はただ長く、眠い曲だと思っていたが、何度目かに開眼する。やはりアーノンクールの注意深く思慮に富んだ演奏がそのきっかけだった。この曲はマリー・アントワネットが好んだため「王妃」というニックネームで呼ばれるという逸話が、嘘ではないように思われてくる(いい加減なものである)。そしてこの曲が、当時流行していた歌のメロディーだと知った。
第2楽章の後半で、旋律にフルートが絡む。丸でお花畑の蝶々のように、上がったり下がったり、予測できないように見えて一定のリズムがある。何とも楽しいのだ。
第3楽章のメヌエットを経てプレストの最終楽章に入ると、一気に5分もかからず終わる。コンパクトで楽しい曲だが、もっとあとの曲に比べるとインパクトが少ない。だから演奏される機会も少ないし、私も今まで聞いたことがなかった。
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