
私はこの演奏をはじめて聞いて(それは第86番の冒頭だった)、その瞬間に「しめた」と思った。思いがけず掘り出し物に出会った時の喜びが、私をとても幸せな気分にさせたからである。全く古さを感じさせないどころか、鮮明で生き生きとした録音と、ふくよかで深みがあり、それでいて端正な演奏は、モダン楽器で演奏されたハイドンのもっとも完璧なもののひとつ(例えばジョージ・セルの演奏がそういう部類に入る)ではないかと思った。
序奏なしで始まる第1楽章はヴィヴァーチェ。一定のリズムを小刻みにしながら進む様は、モーツァルトのカッサシオンなどにも見られるもので、当時の流行なのだろうか。この曲は「パリ交響曲」の中ではもっとも大きな番号の第87番となっているが、作曲はもっとも早い1785年頃と言われている。11分も続くその第1楽章はまったく飽きることがないくらいに素敵だが、それが展開部、再現部などに変わっていく様子が、いい演奏で聞くと手に取るようにわかる(アーノンクールもそのいい例だろう)。
第2楽章の美しいアダージョでは、最後のところで小鳥が鳴くように、木管楽器がさまざに絡み合う。長いがすぐに終わる様な気がするのは、演奏がいいからだろうか。続く第3楽章のメヌエットはオーボエの独壇場。
最終楽章もすこぶる印象的だ。特に中間部に展開されるフーガは興奮を覚える。ザンデルリンクの演奏で聞くと、細部にまでクリアに聞こえ、雨上がりの高速道路を走っているように爽快な気分である。繰り返しが行われるのでたっぷりと味わうことができる。この曲と第86番の2つの曲は、様々な演奏で何度も聞きながら、ここ数日の私はとてもいい気分である。
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