2018年8月20日月曜日

ウィンナ・ワルツ集(フランツ・バウアー=トイスル指揮ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団)

例年になく暑い夏もいつもまにか季節が変わり、ここ数日は秋の気配が漂っている。100周年記念の夏の高校野球も、連日の熱戦のうちに幕を閉じようとしている。暑い残暑の日々に、どういう音楽がもっとも心地いいだろうか。経験的な回答の一つは、ウィンナ・ワルツである。2003年の夏、1か月以上に及ぶ入院から帰還した時、私ははじめてそう思った。その時に見たアーノンクールの指揮するお正月のニューイヤーコンサート、中でも「皇帝円舞曲」が、美しいシェーンブルン宮殿の映像と共に心に残っている。

シュトラウス一家のワルツはもちろん素敵だが、シュトラウス以外の作曲家が作曲したウィンナ・ワルツの名曲を集めた一枚が手元にあったので、今回はそれを聞くことにした。邦盤のタイトルは「金と銀」となっているが、これはもちろんレハールのワルツ「金と銀」のことで、それ以外にも計7曲を集めた洒落た一枚。ウィーン・フィルではなくウィーン・フォルクスオーパーのオーケストラがここでは登場する。もちろん、あの独特のアクセントを持った3拍子を、気取らずしかもロマンチックに表現、ウィーン情緒満点の演奏である。

久しぶりにレハールの曲を聞きながら、初めて親に買ってもらったLP2枚組のことを思い出した。その中にはワルツを集めた面があって、レハールの「金と銀」、「メリー・ウィドウ・ワルツ」、ワルトトイフェルのワルツ「ドナウ川のさざ波」、それに「スケーターズ・ワルツ」の4曲が収録されていた。私はこのLPを何度も何度もかけては、擦り切れるようになるまで聞いていた。確か小学校3年生の頃だったように思う。演奏はアーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団。ジャケットの解説で志鳥栄八郎が、家族団らんのひとときを、ビールでも飲みながら耳を傾けると良い、などと書いていたように思う。思えば一家がステレオ装置を囲んで、クラシックの名曲を鑑賞するなどろいう上品な時間は、裕福な家庭でもとっくの昔に失われてしまった。

この2枚組のLPにも、どういうわけかシュトラウスの音楽が入っていない。その他には、スッペの喜歌劇「軽騎兵」序曲や、オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲、それから「アンダンテ・カンタービレ」や「グリーンスリーヴズの幻想曲」といった作品が、「名曲のアルバム」の如く収録されていた。こういうファミリー向けディスクも、今では過去のものとなってしまった。 だが私は、今でもポピュラー・コンサートの類が大好きである。このようなCDを見かけると、つい買ってしまうのだ。

バウアー=トイスルの指揮するフォルクスオーパー管弦楽団は、いまでは堅苦しいウィーン・フィルのニューイヤーコンサートと違い、肩ひじ張らず、かといっていい加減でもない、丁度いいムードでご当地ものの名曲を、むしろ本家はこちらといわんかのように弾いている。小粋で気さくな雰囲気には好感を持てる。

なお、ローザスの「波濤を越えて」は、かつては有名な曲だったが、今聞くことは非常に少ない。この作曲家は何とメキシコ人である。一方、指揮者のバウアー=トイスルは、あのクレメンス・クラウスに学んだ生粋のオーストリア人である。2010年に死去。フィリップスの録音は1981年となっている。

それからもう一つ。ウィーンのフォルクスオーパーと言えば、「メリー・ウィドウ」の来日公演を思い出す。テレビで見て、実に楽しかったのだ。まあそういうことも含めて、2回旅行したことのあるウィーンの庶民的な光景を、その明るくて澄み切った青空とともに思い出す。ついでなので、1987年に旅行した時の写真を何枚か
探して貼っておきたい。


【収録曲】
1.カルル・ミヒャエル・ツェラー:「謝肉祭の子供」作品382
2.フランツ・レハール:メリー・ウィドウ・ワルツ(舞踏会の美女)
3.フヴェンティーノ・ローザス(エンシュレーゲル編):波濤を越えて
4.フランツ・レハール:「金と銀」作品79
5.ヨゼフ・ランナー:「宮廷舞踏会」作品161
6.カルル・ミヒャエル・ツェラー:「ウィーンの市民」作品419
7.ヨゼフ・ランナー:「ロマンチックな人々」作品167



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