有楽町にあるそこそこ広い映画館に座った私を、重低音のリズムが襲った。映画が始まって長い間、容赦なくそれが続く。振動は四方八方から聞こえてくる。やがてそのリズムに合わせて自然に体が動き、勝手勝手に踊りだす。「レイブ」と呼ばれるらしい。Wikipediaによれば、主に1980年代後半から1990年代初頭にかけてイギリスで流行した若者文化で、麻薬との併用によってエクスタシーを得るようなパーティーが盛んに行われた。スクリーンではモロッコの砂漠で、レイブのパーティーに集まったヨーロッパの若者たち。いずれも、浮浪者、あるいは世捨て人のような人たちで、それぞれの背景はよくわからないが、世間から離れ、もはや生きる意味など失ってしまったような風貌である。だが考えてみれば、いつ自分がそうならないとは限らないのが、今の世の中ではないか。
この映画には、ヨーロッパで始まった第三次世界大戦のニュースと、迫りくる軍事組織が時に登場する。レイブ・パーティーに参加する若者は、そこから逃げ惑うように自動車を走らせ、次の会場を目指す。辛うじて現世の中を生きている。
一方、まだ世捨て人にまでなったわけではないスペイン人の主人公ルイースは、愛する娘がレイブに参加すると言って家を出て行ってしまったらしい。彼は息子のエステバンを伴ってモロッコの砂漠に出かけ、写真を見せては消息を尋ねるが、誰も知らない。しかし、別の場所で次のパーティーがあると聞き、移動する一隊に加わる。人目を避け、目的地に着くまでの行程は、狭い急斜面の道の連続で困難を極める。パンフレットにあるような「父が娘を探すロードムービー」とは桁違いの描写が続く。そして幾度となく繰り返される重低音の音楽も。
次のパーティー会場まで、いったいどういう風に行くというのだろう。あまり計画性はなく、行き当たりばったりのようにさえ見える。いや、彼らはすでに死後の世界との境を歩いているのだということが、次第にわかる。そして突如起こる事故や事件に、見る者は震撼し、目を覚ます。主人公を含め最後まで登場人物の背景も関係もわからない。極限状態に置かれ、人間が取りうる行動の選択肢がなくなっていく悲しさと、それを宿命として受け入れなければならないと悟る、死の直前の恐怖。それにしても一体何を描こうとしているのだろう。見終わると疑問が長く続く。そんなことを深く考えさせられるこの映画は、カンヌ国際映画祭に出品され、4冠に輝いた。
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