
私が最初にこのメロディーを聞いたのは、「4つの即興曲」変ロ長調D953の第3曲である。一度聞いたら忘れられないメロディーは、シューベルトらしさが十全に出たもので、一見簡単なのだが不思議なパワーを持っている。何故かわからないのだが、懐かしさが込み上げてくる。丁度中学生の頃、毎日歩いていた街並みなどを思い出す。
シューベルトはこの劇付随音楽をかなり大急ぎで作曲したようだ。よく知られているように、序曲は他の作品からの転用である。だが今ではこの序曲を「ロザムンデ」序曲として演奏される。初めてサヴァリッシュの指揮で聞いた時は、何か出来損ないの散漫な曲だと思ったものだ。だが何度か聞くうちに(いつもシューベルトではそうなのだが)、だんだん曲が耳に馴染んできて、いつのまにか虜になってしまう。序曲の序奏からして、こんなにきれいな音楽だったのか、とさえ思う。こうなったら、全曲を聞いてみたい。
序曲といくつかの曲を抜粋で録音したディスクは多いが、全曲を録音したCDは少ない。その中で私は、カール・ミュンヒンガーの指揮したウィーン・フィルによる名演奏の録音を中古屋で発見し、即座に買い求めた。1974年のデッカによる録音はリマスターによって色褪せてはいない。アルト独唱はロハンギス・ヤシュメ、合唱はウィーン国立歌劇場合唱団である。
第1幕への前奏曲と続くバレエ音楽は、ともに同じメロディーで始まるが、バレエの方が木管楽器が活躍し美しい。ただシューベルトはいつもそうなのだが、続けて聞いても冗長に感じない。そして第2幕への前奏曲を経ると、いよいよ「ロマンツェ」となり深々とした歌が始まる。そしてさらに合唱が登場する「亡霊の合唱」。
あの「ロザムンデ」のメロディーはそのあとの「間奏曲」である。ここのメロディーの美しさを何と例えたらいいのだろうか。何か特にあるものの印象を残すわけではないのが不思議で、いわば極めつけの心象風景である。単純なメロディーなのに、無性に悲しい。7分以上もあるこの曲を、丁寧に心を込めてウィーン・フィルが演奏している。
音楽は「羊飼いのメロディー」、「羊飼いの合唱」、さらに「狩人の合唱」、「バレエ」へと続く。何かウェーバーあたりの歌劇を聞いているようだ。シューベルトが特に嫌いでもない限り、全曲盤を聞く価値はあると思う。お正月明けの寒い冬の朝、この曲を聞きながら出勤するのがここのところの日課である。このブログを書いてしまったら、別の曲に切り替える予定だが、なかなかそれが残念な気持ちにさえなっている。
全曲を収録したディスクにはこの他に、クラウディオ・アバドによるもの(ヨーロッパ室内管弦楽団)や、ウィリー・ボスコフスキーによるもの(シュターツカペレ・ドレスデン)などがある。このミュンヒンガー盤では、ウェーバーの劇音楽「プレチョーザ」序曲、シューマンの歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲がカップリングされている。
0 件のコメント:
コメントを投稿