若いモーツァルトの快活で心地よい響きが、このピアノ協奏曲でも聞くことができる。ザルツブルク時代の最後とも言える時期に作曲された「2台のピアノのための協奏曲」は、非常にしばしば「3台のピアノのための協奏曲」とともに録音される。私が初めてこの作品に触れ、自ら購入したルプーとペライアによるCDもまた、そのような一枚である。
ペライアは80年代に、歴史に残るピアノ協奏曲全集を弾き振りで録音し、その評価はいまだに落ちていない。この演奏は録音がやや硬いという難点を差し引いても、同時期に発売された内田光子による全集と双璧をなす素晴らしさと思っている。とにかく完璧なのである。そしてこの全集は、しばしば省略される第1番から第4番までをも含んでいながら、第7番と第10番を欠いていることが、はじめは不思議だった。この第7番が「3台のピアノ」、第10番が「2台のピアノ」のための協奏曲であることを知ったのは、このCDを所有した時からだった。
いわばその全集を補完するのがこのルプーとともに入れた1枚で、よってペライアはイギリス室内管弦楽団を弾き振りもしている。録音は80年代後半、余白には幻想曲ヘ長調K608と、四手のためのアンダンテと変奏曲ト長調K501が入れられている。
ペライアはモーツァルト弾きとしての名声を決定的なまでに高めたピアニストだが、ルプーのモーツァルトというのはあまり思いつかない。Deccaレーベルからリリースされている有名な録音は、ベートーヴェンとグリークくらいだろうか。けれどもこれらの演奏は、目立たないが極めつけのリリシズムを湛えた演奏として名高い。そのルプーによるペライアと組んだCDを池袋のHMVで試聴した瞬間、これだと思った。最初の出だしから、こんなに見事なアンサンブルがあるのか、というような名演に思えた。2台のピアノがまるで一人によって弾かれているように溶け合うものの、その音の厚みや複雑な絡みは紛れもなく2台分で、独特の雰囲気である。私は特に第1楽章の堂々とした音楽が気に入っている。
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