
私が初めてモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を聞いたのは、確か中学生の時で、やはり第5番だったが、当時LPレコードの表と裏にこの組合せで収録されるのが通常だった。第5番は「トルコ風」というニックネームが付けられていて、特に有名な曲ということになっていた。CDの時代になってここにロンドハ長調K373やアダージョホ長調K216が加わった。
これらの一群のヴァイオリン協奏曲は、彼の19歳の年である1775年、ザルツブルクにおいて作曲された。故にこれらは「ザルツブルク協奏曲」と呼ばれているようだが、そのようなことはこれまで知らなかった。いずれもモーツァルトの若々しいリズムや、優雅なメロディーが溢れてくる名曲である。
私はイツァーク・パールマンの独奏、ジェームズ・レヴァイン指揮のウィーン・フィルによる演奏をテープに録音して楽しんでいたと記憶しているが、この第3番を初めて聞いたのは、 もう少し古いグリュミオーによる演奏によってだった。第5番しか知らなかった私は、第3番も大変素敵な曲で、その第1楽章の冒頭は忘れられないメロディーであることを発見し、大変嬉しくなった。それからしばらくは第3番ばかりを聞き、もしかしたら第5番よりもいい曲なのではないか、などと思ったりした。
後年になって、1960年代初期に収録されたこのコンビによるヴァイオリン協奏曲全集がCD2枚組の廉価版で再発され、私は躊躇なく購入したが、録音は大変素晴らしく、明るく歌うグリュミオーの屈託のないヴァイオリンと、それをサポートする若いコリン・デイヴィスの快速の伴奏が一体になって、聞く者を幸福にさせる。今でもこの演奏は、大変魅力的である。こんなに幸せな曲はないのではないか・・・あるとき若い私はそんなことを考えたことを思い出す。
快活な第1楽章に続く第2楽章の素晴らしさ。だが、今私はモーツァルトのオペラを毎日のように聞いている。「フィガロ」にせよ「魔笛」にせよ、いや「イドメネオ」だって、モーツァルトのオペラほど私を幸福にしてくれるものはない。このような音楽が果たしてあったのだろうか、などと今更ながら思う。オペラ作曲家としてのモーツァルトを知ってしまうと、それ以外のジャンルの曲が、「ついでに」作曲されたのではないか、とさえ思えてくるから不思議である。
だからといって、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲もたまにはいいものだ。猛暑の夏に、一服の清涼剤のように、耳に心地よく響くメロディーを聞きながら、今日も電車で会社へと向かった。
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