2016年3月27日日曜日

モーツァルト:ピアノ協奏曲第18番変ロ長調K456(P:アンドレアス・シュタイアー、コンチェルト・ケルン)

ピアノ協奏曲第18番変ロ長調を初めて聞いたとき、とても可愛らしい曲に思えた。飾り気がないとは言え明るく親しみやすい。控えめでありながら知的で存在感がある。その前のピアノ協奏曲にはないような新しさを兼ね備えているとも感じられる点で、モーツァルトが残したそこそこの曲であるとも思っている。

もっとも素晴らしいと感じられるのは第2楽章である。ここで音楽はト短調になっている。変ロ長調から見るとト短調は、同じフラットが二つの調であり、この関係は平行調と呼ばれている。変ロ長調のピアノ協奏曲には他に第15番、それにあの第27番がある。

この3つの曲から私がイメージするのは、暖かく静かな春の陽気である。だからこの第18番を聞くのも、丁度桜の咲き始め頃が相応しいと勝手に決めつけ、その朝に何度も繰り返し聞いていた。ほら、いつもは何もないと通り過ぎてしまうようなところにも見事な花をつけ、堂々と咲き誇っているソメイヨシノのような曲だと思いませんか?

アンドレアス・シュタイアーによるこの曲の演奏は、古楽器奏法によるものである。ピアノそのものも現代のピアノではなく、当時のものを用いている。したがってビブラートはなく、速度も幾分速い。そのせいか音楽が引き締まっている。若干こじんまりと聞こえるが、ピアノの音も小さく、チェンバロのように転がるので、聞いた印象は現代楽器によるものと随分異なる。だが慣れるとこの軽快さがたまらない。

この曲は盲目の女性ピアニスト、M. P. パラディスのために作曲された。この曲の初演の翌年、彼自身によって演奏されたとき、父レオポルトはウィーンを訪れていた。父によるウィーン訪問は、この複雑な父子の関係について様々な想像を掻き立てる。だがこの訪問は父にとって、息子の成功を目の当たりにする機会となったようだ。この時の演奏についても「涙を流した」と手紙に記しているという。

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