私にとって「ジークフリート牧歌」は最も心が安らぐ音楽である。眠りにつく前のひとときを、一人静かに聞くのがいい。スイスの静かな湖畔の家に、ワーグナーは住んでいた。楽劇「ジークフリート」の中に出てくる音楽が、それとなく使われている。ワーグナーはこの曲を妻のコジマに捧げた。だがそういうことはともかく、この曲ほど「癒やし」の音楽はないと思う。
マゼールはこの曲を天下のベルリン・フィルを使って、十分に大きな曲のように演奏している。けれども大袈裟すぎず、かといって冷めた演奏でもない。ツボを押さえたアーティスティックな演奏で、もしかすると自然な感じではないかも知れない。だが私はこの演奏が大好きである。それにしてもベルリン・フィルは物凄く上手い。ホルンやクラリネットの独奏部分など、ほれぼれとして聴きほれてしまう。
このCDは見つけた時に衝動買いをした記憶がある。1000円もしなかったのに結構新しい録音で、このようなCDがあったのか、と思った。私はマゼールの実演を何度か聞いているが、どれも素晴らしい演奏で感動的であった。一度も裏切られたことがない。それなので、このCDがいい演奏でないはずはないと思った。その通りだった。
冒頭の歌劇「リエンツィ」序曲は、誇大妄想の作曲家が最初に作った大袈裟な序曲で、序曲だけが有名である。この曲を綺麗に聴かせるマゼールはさすがだと思う。都会的な味わいがある。一方、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲は、どの演奏で聞いてもそこそこ聞き応えがあるが、このコンビで聞くと何とも素晴らしい音のドラマが展開されている。作為的でないような感じながら、結構計算されているのはマゼール風。明るく伸びやかなので、不自然な感じがしないのがいい。
楽劇「ジークフリート」より「ジークフリートのラインへの旅」は壮大な音の旅で、魔法にかかったように引き込まれて行く。オーセンティックな演奏ではないかもしれないが、これはこれで納得できる。録音もすこぶる良い。それにしてもベルリン・フィルは上手い。
10年程度の間隔で、同じ曲の異なった演奏を揃えておきたくなる。カラヤンやレヴァインの後、10年ほど経って私のコレクションに追加されたのは、1999年に録音されたこのCDであった。 この演奏なら、大音量のワーグナーが長く続いても、もたれることはない。いろいろな意味で、大変充実したプロフェッショナルな演奏だと感心する。
【収録曲】
1. 歌劇「リエンツィ」序曲
2. 歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
3. 「ファウスト」序曲
4. 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
5. ジークフリート牧歌
6. 楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートのラインへの旅」
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