2013年1月24日木曜日

ワーグナー:管弦楽曲集(ジェームズ・レヴァイン指揮METオーケストラ)

ワーグナーが27歳のころに作曲した初期の大作、歌劇「リエンツィ」の序曲は、ワーグナーとヴェルディを足して二で割ったような曲だと、初めて聞いた時に思った。あのワーグナーらしいドイツ・ロマン風音楽と、イタリア・オペラのような明快なリズムの部分が交互にやってくる。不思議な魅力だ。当時のワーグナーは、マイヤベーアをはじめとするフランスのグランド・オペラに傾倒していたことからもわかるように、 その傾向が強いというのが正しい評価かもしれないけれど。

その「リエンツィ」序曲には、ドイツ風の演奏とイタリア風の演奏があるように思う。初めてこの曲が素晴らしく聞こえたのは、後者の方だった。レヴァインがMETオーケストラを指揮して録音したCDである。録音の面においても、このCDはかなりいい。何と言っても聞いていてわくわくするようなところが、この演奏(CD)にはある。丁度絶好調だった頃のレヴァインの面目躍如といったところだろうか。

アメリカのオーケストラのCDを集めようとした時期があった。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場管弦楽団は、私のコレクションの目的のひとつとなった。このオーケストラはもっぱらオペラの演奏団体だったが、丁度その頃に単独で管弦楽曲を録音するようになった。そしてメトロポリタン・オペラが来日した1993年6月、レヴァイン指揮によるオーケストラ・コンサートが催された。サントリー・ホールに出かけて聞いたのは、「展覧会の絵」と「春の祭典」という豪華プログラムで、しかもアンコールが3曲もあった。D席からは客席も良く見え、そこにパヴァロッティもいた。

それに相前後してCDがリリースされた。記憶では「エロイカ」とこのワーグナーの管弦楽曲集が第1弾だった。CDはその後出なくなったが、私は1995年にニューヨークでマーラーの交響曲第6番などの演奏会を聞いている。どれも素晴らしい演奏で、充実した迫力と技量は、まさにカロリーの高いニューヨークのステーキのようにパワフルだった。

このワーグナーを聞くと、その頃の思い出が蘇ってくる。レヴァインの指揮するメトロポリタン歌劇場の演奏には何度も足を運んだ。そのひとつがワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」だった。長大なこの作品は18時に始まった(通常は20時である)。私は会社を早々に抜けだして、このオペラに出掛けた。しかし私は連日夜遅くまで働いていたので、睡魔に襲われるのは明白だった。

このCDにはその「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の第1幕への前奏曲も入っている。東京でのコンサートのアンコール最終曲も、この曲だった。他にも名演の多い曲だが、ここで聞く演奏はやや粗っぽいものの、旋律を明快に歌わせてしかも迫力があり、何か大変新鮮である。この曲と、めるで別の曲ように聞こえる「リエンツィ」序曲が、特に名演だと思う。


【収録曲】
1.ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
2.ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲~バッカナール(パリ版)
3.ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
4.ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
5.ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲


0 件のコメント:

コメントを投稿

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調作品102(Vn: ルノー・カピュソン、Vc: ゴーティエ・カピュソン、チョン・ミュンフン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)

ブラームスには2つのピアノ協奏曲、1つのヴァイオリン協奏曲のほかに、もう一つ協奏曲がある。それが「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」という曲である。ところがこの曲は作品番号が102であることからもわかるように、これはブラームス晩年の作品であり(54歳)、すでに歴史に残る4つの交...