今回私が宿泊したNovotel Hua Hin Cha Am Beach Resort and Spaは、ホアヒンの北20キロ程度の地点(実際にはペッチャブリ県のチャアム)にあって、海に面している。ホアヒンを含む海沿いには、リゾート・ホテルや長期滞在型のアパートが並んでいて、そのうちのいくつかは高級な欧米系のリゾートである。その意味で国際的な観光地であるとも言える。高層の建物もあって、そのひとつがNovotelであった。このフランス系のホテルは、高級ではないが中級よりは少し上のランクに入る。広いプールがあってスライダーが付いており、子供を連れた家族に人気である。
子供がプールで遊ぶことを考慮して、予約の取りやすかったここのホテルをAgodaで予約したことは、結果的には正解だったと思う。ホアヒンへは毎時バスが往復しており、部屋の窓から見えるバンコク湾の風景は見事なくらいに綺麗であった。
バスタブがなく、エレベータなどの設備がやや古い。レストランの食事は高すぎないが、それほど特徴があるわけではない。しかしロビーにいると吹き抜けていく風が心地よく、プールサイドのレストランはのんびり過ごすにはいいものだ。子供向けの部屋も広く、トレーニング・ルームも充実している。もちろんプールの中にバーもある。
ここに7泊滞在し、毎日プールで過ごした日々は、私から日頃のストレスを奪っていった。波が高く海ではとても泳げなかったが、プールサイド脇のデッキチェアに寝そべっていると時間がたつもの忘れた。喉が乾けば、その場でカクテルなどを注文できるのは勿論だが、ホテルの入り口にはセブン・イレブンがあって、何でも必要なものは買える。
事前に調べたホテルのクチコミは、このホテル周辺の施設について、正反対の2つの意見に分かれていた。ひとつは「ホテルの周りには何でもある」という意見である。もう一方の意見は「ホテルの周りには何もない」という意見。どちらが正しいかと問われれば、どちらも正しいと言えるだろう。
ホテルの入口にあるのはセブン・イレブンで、その並びにはマッサージ屋、仕立屋、クリーニング屋、レストラン、ATM、タクシー屋の小屋などが並び、その続きには果物屋、より多くのレストランや土産物屋が並んでいた。生活に必要なものは何でもひと通り揃う。一方で、ここには他にみるべきものはない。高級な店も、贅沢なレストランもない。そしてあるのはただ毎日同じ人が同じところで同じことをやっている日常的な光景、つまり変化のない空間と時間。その風景はタイの典型的な農村ではなく、ホテルの客をあてこんだ、やや西洋化された、しかしどこまでもタイ風の町並みであった。どのレストランにも英語のメニュー、ハンバーガーやスパゲッティのようなイタリア料理、Free Wifiなどが完備され、勿論冷たいビールもある。客はほとんど西洋人だ。
殺風景な風景はホテルの滞在をややつまらないものにしている。世離れした美しい光景に出会えるプーケットなどの世界的観光地・・・はむしろタイ風とは言い難いのだが・・・のような天国感はない。ここは少し変わったタイの観光地で、長期滞在のヨーロッパ人と金持ちのバンコク住民の街である。
海は東に面し、朝日が昇る。一方、裏手の山はその向こうがミャンマーである。この山地にはケーン・クラチャーン国立公園やカオ・サム・ローイ・ヨート国立公園などがあって、トレッキングなどができるツアーも用意されている。タイには珍しいワイナリーもある。だが、これらの近郊へのエクスカーションは、私の旅行前の期待をさほど高めてはくれなかった。一週間程度の滞在では、わざわざ出かけていくほどのことでもない、とあっさりあきらめた。やはりここの良さは、比較的温和な気候と、治安の良さ、それに美味しいシーフードということになるだろう。
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