
グリーグなど、まるでドイツ・ロマン派の本流のようなメロディーを思い起こすと、そこにゲーゼのような橋渡し役がいたということが、あまり知られていないことに驚く。実際、ゲーゼの音楽のCDといったってほとんど売られていないし、演奏会でも取り上げられない。だがその音楽の親しみやすさから考えれば、これは意外である。そのゲーゼの最も有名な作品は、彼の8曲中最初の交響曲第1番であるという(私はまだ聞いたことがない)。
弦楽八重奏曲は、弦楽四重奏曲を2つ合わせた規模の音楽で、ヴァイオリン4人、ヴィオラ2人、チェロ2人の構成である。弦楽オーケストラというには小さいが、カルテットでは表現できないような迫力の音楽が、室内楽曲の中では少ない数のジャンルに彩りを与えている。この曲の気持ちがいい第1楽章を聞くと、規模の大きな室内楽を聞く楽しもというものを実感する。弦楽四重奏だと音楽が小さく、室内オーケストラだと輪郭がぼやけてくるのだ。
第2楽章からスケルツォの第3楽章でも音楽が沈むことがない。このメンデルスゾーン風の育ちのいいロマン性が、好きなものにはたまらないのではないかと思う。ロマン派の音楽ということが、旋律の美しさを強調する。 まさに初夏に聞くには相応しいような音楽のように思えてくる。
終楽章ではアレグロに戻って、颯爽とした風が吹き抜けるかのようなメロディーが流れてきて印象的である。メンデルソーンが若干16歳の時に作曲した弦楽八重奏曲を、ゲーゼはライプチヒを追われてコペンハーゲンへ帰郷後の1848年、31歳の時に作曲した。メンデルスゾーンの天才的早熟さはないかもしれないが、もう少し落ち着いた、しかしみずみずしさを失っていない、ちょうどバランスのいい作品である。
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