2014年4月12日土曜日

シューマン:交響曲第1番変ロ長調作品38「春」(ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮シュターツカペレ・ドレスデン)

毎年春、それも桜の散った後の、少し遅い春になると聞きたくなるのがシューマンの作品である。少し眠気を誘うような、もやがかかった日は特に、シューマンの作品が似合う。そのシューマンの作品でも「春」というタイトルが付けられた作品が、交響曲第1番変ロ長調である。この曲はシューマンの交響曲の中でもとりわけ明るく、親しみやすい。

シューベルトの「グレート」交響曲の発見に触発されたこの作品は、メンデルスゾーンによって初演された、ロマン派のまさに中間に属する作品である。第1楽章の冒頭から、トランペットとホルンのファンファーレで始まる。そのメロディーを弦楽器で繰り返すと、両者がからみ合って序奏部分のクライマックスを築く。ここの部分を聴くだけでもうれしくなる。少し遅くなって木管楽器などが陰影を保ちながら絡んでくる。少しずつクレッシェンドしていく様は春の息吹を感じさせる。やがて鳴り出す第1主題。どんな演奏で聞いても、ここの第1楽章は素晴らしい。

第1楽章の緩急を伴った曲調は、ほのかな中にも力強く春の始まりを感じさせる。時折響くトライアングルの響きは耳に心地よいが、私はこの曲を聞くとどういうわけか春の海を連想する(もちろんシューマンはこの当時ライプチヒにいたので海とは関係ないと思う)。

第2楽章のドイツ・ロマン派を地で行くようなラルゲットはまた、第1楽章とは違う魅力に溢れている。一方第3楽章は快活なスケルツォで、リズムの変化が面白い。音楽はそのまま終楽章に入っていくが、ここで春は満開となる。一気に書き進められたというこの交響曲には、後年になって自殺未遂をするようなシューマンを見つけることは難しい。

どのような演奏で聞いてもいいのだが、私は古くからの愛聴盤であったサヴァリッシュの演奏に耳を傾けている。この演奏は当時東ドイツ領だったドレスデンのオーケストラを使い、EMIが録音したものだ。当時のシュターツカペレ・ドレスデンの響きは、時折西側のレコード会社が録音している。例えばカラヤンの「マイスタージンガー」、クライバーの「魔弾の射手」といった具合である。サヴァリッシュも1972年、この輝かしいシューマン全集を録音してその評価は今でも下がることがない。

サヴァリッシュはこの演奏で、時に冷たいなどと言われる演奏を、颯爽と熱く仕上げている。時に元気が良過ぎるほどの演奏は全体にフレッシュで知的、メリハリが合って今では数多いテンポ感のある演奏も、この演奏が基準になっているのではないかとさえ思えるほどだ。

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