丸一日をかけて根室を往復した私は、深夜急行で札幌に帰り着いた。次の目的地は網走方面だった。函館本線下りの特急列車「オホーツク1号」だったかに乗り込んだ。空いた車内で眠り込んでいる間に列車は石狩平野を快走し、旭川を過ぎて石北本線に入った。天気は曇りで今にも雨が降り出しそうだった。午後は雨になると予報が出ていた。私はとっさに上川で下車した。
鉄道旅行とは言ってもずっと列車に乗っているのもつまらないので、下車して観光しようと思ったのだった。行き先は層雲峡だった。駅前からバスに乗り、川沿いの渓谷を走ること30分程度でロープウェイ乗り場に到着した。ここから黒岳の山頂まで上る。やさしい山登りは夜行明けの体にも心地よい気分をもたらしたが、視界が悪くしかも寒い。結局そのまま引き返し、今度は自転車を借りて層雲峡をサイクリングした。途中に何人かの旅行者と知り合い、一緒に写真をとったりしたが、とうとう雨が降りだした。私は仕方なく上川駅に引き返し、特急列車に乗って旭川へ引き返した。
旭川で1拍しようとホテルを探したが、宿泊費は私にとって大きすぎる出費だった。それよりも夜行列車に乗れば、移動しながら宿泊費を浮かすことができるのは2年前の九州旅行でも体験済みだった。当時の北海道にはまだまだ多くの夜行列車が走っていた。私は深夜に出発する急行「大雪」に乗りこみ、遠軽を目指した。さっき通った石北本線を再び下り、列車は4時過ぎに遠軽駅に到着した。外は大雨で、狭い待合室は大勢の乗り換え客で満員だった。オホーツク海に近いためかかなり寒い。
私は名寄本線の一番列車に乗ることにした。ここから2日間は、今はなきローカル線の旅となった。名寄本線は「本線」と名前が付いているにもかかわらず、1989年に廃止されている。JRになって真っ先に廃止されたことになる。もとより雨がひどく、しかも朝の列車は通学客などで結構混雑していた。途中「沼の上」という駅にとまった。この駅はその名の通り沼の上にでも作ったかのような駅で、ホームは草で覆われ、降りる人もなく、おおよそ駅という体をなしていない。私はあきれるほどに荒廃した駅の写真を撮り、北海道のローカル線が廃線の憂き目にあることを実感した。ひたすら森林地帯を走るだけの退屈な路線だった。古びた名寄駅に着いたのは、まだ朝の8時頃だった。
朝8時29分に深名線の1番列車が走る。これを逃すと次の列車は14時21分となり、これにうまく接続する名寄本線の列車はない。そこで私はこの列車に乗り、途中の朱鞠内で深川行きに乗り換えた。ここの路線はものすごい人口過疎地であり、しかも豪雪地帯である。滅多にしか走らない列車も通過してしまう駅があったりする。大雨の中を深川に着いたのは(古い時刻表を見る限り)お昼頃だったようだ。
その後どうしたかは覚えていない。私の想像では函館本線を岩見沢まで戻り、もしかしたらさらに札幌にまで戻った。その理由は再び急行「大雪」に乗るためである。次の目的地は湧網線である。つまり私は2日連続で早朝の遠軽に降り立ったことになる。今から思えば北を目指し、稚内に行っておけば良かったと思う。だがおそらくいい列車のプランを組めなかったのだろう。それよりも真冬には流氷を見ながら走る湧網線に乗ってみたいと思ったようだ。だが外は相変わらず雨が降り続いていた。
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