2012年10月8日月曜日
ブリテン:ヴァイオリン協奏曲作品15(Vn:ジャニーヌ・ヤンセン、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ロンドン交響楽団)
このCDの魅力は、独奏がジャニーヌ・ヤンセンであることに加え、珍しいブリテンのヴァイオリン協奏曲がカップリングされていることである。特にブリテンのヴァイオリン協奏曲は、これまでの私のコレクションにない曲であった。だからこそこのCDに耳を傾けることとなった。
20世紀を代表するイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913-1876)は、オペラ「ピーター・グライムズ」やパーセルの主題による「青少年のための管弦楽入門」などで知られる。特に「青少年」は確か、私が中学生の頃の音楽の教科書にも載っていたようで馴染みが深い。けれども1940年、第2次世界大戦の真っただ中にニューヨークで初演されたヴァイオリン協奏曲は、どちらかといえば珍しい曲だろう。同時代に作曲されたバルトークやショスタコーヴィッチに比べても、知名度は低いと言わざるを得ない。
だが、この曲はなかなか魅力的である。私は持ち歩くiPodで、早朝の山手線内でも聞いているので、近くの人が漏れ聞こえる不協和音に不審な顔をしているときがある。それでも外の喧騒に比べるとはるかに心地よいので、電車内の騒音をかき消すべく大音量で鳴らしているのだ。
第1楽章の冒頭がティンパニの連打で始まるのがベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と共通しているが、それだけでこの2つの曲を並べたとしたらお笑いである。ブリテンがベートーヴェンを参考にそういう冒頭を考えたのかどうかはわからない。続くジャジーなメロディに続いてヴァイオリンがすーっと入ってくる。ハープや弦のピチカートがさりげなく挿入され、やはり20世紀の曲だと思う。独奏ヴァイオリンが縦横自在に高低差を行ったり来たりするのに対し、オーケストラが伴奏的リズムを刻むのは、ヴァイオリン協奏曲の一般的な感じである。だから割に聞きやすい。ヴァイオリン協奏曲の常として、聞き始めたらいつのまにか最後まで聞いてしまうという感じである。音楽が途切れない上に、主題がわかりやすいからかもしれない。
第2楽章のスケルツォはやや早い音楽で、ヤルヴィの伴奏がリズミカルなので素晴らしい。ヤンセンの音楽はベートーヴェンでもそうなのだが、新鮮で現代的な音色であるにもかかわらず、さりげない知的さが好感をもたらす。
第3楽章へは続いて演奏される。パッサカリアと名が付いているが、トロンボーンや鞭が効果的に使われ、全体にゆっくり目の静かな楽章だが、中間部ではそれなりに技巧的な部分が続き、聞いている方も熱を帯びる。仰々しく終わらないのがまたいい。
各楽章10分程度、全体で約30分の演奏時間は、骨格がしっかりしているので聞いていて飽きないだろう。この時期に作曲されたヴァイオリン協奏曲としては、聞きやすい曲と言えるかも知れない。伴奏のロンドン交響楽団が、実に見事。
なお、カップリングのベートーヴェンについては何も言うことがない。パーヴォ・ヤルヴィ指揮のドイツ・カンマーフィルハーモニーの弾むようなリズムに合わせて、明瞭で新鮮な音色が最高のヴァイオリン協奏曲に新しい光を当てている。このようなすっきりした演奏が増えてきた。聞き古した曲でもまだまだ新しさが感じられるのだから、やはり音楽というのは楽しい、そう改めて感じた。
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