2012年10月14日日曜日

国鉄時代の鉄道旅行:第2回目(1983年3月)(4)

松代温泉を早朝に立ち、朝もやの中を篠ノ井駅を目指す。ここで食べた天ぷらそばがその日の朝食で、それは実に美味しかったが、覚えているのは断片的な出来事だけである。

島崎藤村が「小諸なる古城のほとり」と詠んだ美しい街小諸は、千曲川に沿って開け、遠くに浅間山を見ることができる。ここで途中下車をして、しばし観光をしたいと思っていたのだが、乗り換え時間の関係で下車することを諦めざるを得なかった。仕方がないから絵葉書(写真)を買った。

たった1分の待ち合わせで小海線に乗り換えないと、その日のうちに大阪へ戻ることはできない。小海線は我が国の鉄道の中で最高地点を通過する路線で、今回の計画のハイライトである。それで何とか乗りたいと思った。長野県でも南の地域にはもう雪がなく、春休みを高原で過ごす客などが八ヶ岳山麓に押し寄せていた。野辺山駅を過ぎると写真を撮る若者などが見え、高原の景色の中を小淵沢へ向け進んでいった。途中、国鉄最高地点の標識(標高1345メートル)をばっちりカメラに収め、急な勾配を下っていくあたりは景色も最高で、あっという間に小淵沢へ到着した。

フォッサマグナが通る深い谷を見下ろしながら中央線を下り、諏訪湖を通って松本に出た。松本は何度も訪れたことのある美しい町だが、やはり今回は観光をパス。名古屋を目指して一路進む。「寝覚の床」を垣間見るあたりまでは風光明媚な路線だったが、徐々に都会の雰囲気になって私の旅も終わる予感がしてきた。夕暮れの名古屋からは新幹線で1時間の距離だが、東海道本線を下ると3時間以上かかる。大垣、米原、京都。4日間鈍行列車に乗り詰めだったが、私は心地よい疲れとともに新大阪駅へ帰着した。

私はまだ使い残した「青春18きっぷ」の残りの2日分をどう使うかを考えていた。そしてまたもや東海道本線を上京するのはそれからわずか2日後の3月22日のことだったと記録には残っている。


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