教科書には副題としての「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」についても言及されていて、イギリスを代表するバロックの大家のある部分の音楽を変奏することの面白さがここにはある、というようなことを学んだと思う。それを初めて聞いた時に、「あれ、これはどこかで聞いた曲だな」と思ったのだが、何故そう思ったかはわからない。その作品とはヘンリー・パーセル(1659-1695)の劇音楽「アブデラザール」から組曲第2番「ロンド」の主題だそうである。このような曲をそれ以前に聞いていたとは、思えないのである。
パーセルの主題はもともとバロック音楽だが、それが新古典風の趣で結構華やかにアレンジされていくのが面白い。当時の中学生としては、何やら不思議な感覚だったと思う。特に打楽器で主題をパチャパチャと鳴ると、何かユーモラスで笑いたくなるような感じだった。しかし今聞くと、この音楽が単に初心者のみを意識した子供騙しの音楽ではなく、各楽器の個性を生かす変奏と編曲で大変に面白い。

この作品は英国政府の委託によって教育用の映画のために作曲された。1945年当時、英国では新進気鋭の作曲家によって新しく作曲されたこのような作品が、その題材として使われていたのは何とも贅沢な話だと思う。そしていまでも純粋な管弦楽作品として聞いても、とてもチャーミングである。
私はこの曲の録音を数種類手元に持っているが、今回はアンタル・ドラティ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団による演奏で聞いた。これは私が持っている唯一の解説付きの録音で、そのナレーションを007の俳優ショーン・コネリーが受け持っているところが凄い。ハンガリー人らしいメリハリのある演奏は、分離の良いデッカのクリヤーでバランス良い録音によって、各楽器の音色とともにとても生き生きとしている。
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