2012年10月2日火曜日

国鉄時代の鉄道旅行(プロローグ)

高校生になると行動範囲が一気に広がり、仲間と泊まりがけの旅行に行く事も多くなった。ただお金がないので、私は行けるところはできるだけ各駅停車を使おうと考えた。それにはきっかけがある。国鉄(当時)が1982年に発売した「青春18きっぷ」(最初は「青春18のびのびきっぷ」と言った)である。これを使えば計6日間、わずかに1万円で全国の普通列車が乗り放題となる。当時私は大阪に住んでいたので、時刻表を見ながらどこまで遠くに行けるか、などと考え始めた。これがそれから計16回続く鉄道旅行の始まりであった。

大阪を早朝に発つと、夕方には東京に着くことができる。東京で少し観光して、ホテルに泊まるのはお金がもったいないから夜行列車に乗る。すると朝には新潟まで行ける。あるいは大垣を夜に出る東京行き夜行列車なら、翌朝には東北本線を一路北上し、最終の青函連絡船に乗ることも可能だ。早朝の函館から札幌を目指し・・・このような計画は私の想像力を日本中のあらゆる地域へと運んで行った。

とうとう私は友人を誘って夏休みや春休みに旅行計画を立て、そして実践した。思えば当時の鉄道は、まだまだローカル線が全国に残り、赤字を続けながらも大編成の列車が東西に走り、長時間の停車時間には途中下車して駅弁を買ったりする楽しみがあった。不思議な事に今ではこのような楽しみがなくなったにも関わらず、鉄道ブームと言われている理由が私にはわからない。

私の鉄道旅行は主に高校生の3年間に集中し、大学2年の春(1987年3月)に終了する。この日は国鉄最後の日で、翌日からはJRとなった。ここを境に鉄道旅行はつまらなくなり、私もただ乗るための旅行をしなくなった。ローカル線が次々と廃止され、北海道や北九州などは見る陰もない。長距離列車は分割され、編成は短くなり、停車時間も少くなった。座席はロングシートが中心で、混雑さも増し、駅前はどこも風情を失った。

今から思えば、当時の鉄道は隆盛を誇っていたとさえ思える。もっと昔・・・まだ新幹線がなかった頃の夜行列車やSLを語る人も少なくない。だが私にとっては鈍行列車を乗り継いで、全国を「ただ乗るため」だけに移動していた国鉄の最後の数年間が、時に大変懐かしい。幸い当時の記録が残っていたので、これから順に記していきたい。

第1回目(1982年7月):東海道本線、横須賀線、根岸線。
第2回目(1983年3月):常磐線、磐越東線、磐越西線、飯山線、小海線、中央西線。
第3回目(1983年3月):飯田線、関西本線。
第4回目(1983年7月):紀勢本線。
第5回目(1983年8月):芸備線、木次線、山陰本線、越美南線、越美北線。
第6回目(1983年8月):高山本線。
第7回目(1984年3月):上越線、弥彦線。
第8回目(1985年3月):山陽本線、四国、九州周遊。
第9回目(1985年3月):関西近郊区間周遊。
第10回目(1985年4月):湖西線、小浜線、舞鶴線、加古川線、飾磨港線、和田岬線。
第11回目(1985年8月):中央東線、大糸線、北陸本線。
第12回目(1986年3月):播但線、宮津線、京葉線、武蔵野線。
第13回目(1986年3月):因美線、津山線。
第14回目(1986年9月):北海道周遊。
第15回目(1987年3月):伊勢線、参宮線。
第16回目(1987年3月):上越新幹線、東北新幹線、花輪線、奥羽本線、御殿場線。




もちろんこれ以前にも小さな旅行は何度もしているし、JRになってから乗車した区間もある。だがいわゆる「鉄道旅行」として乗り歩いたのはこの期間に集中しており、その総延長乗車距離は重複区間を除いても11857.6キロ、さらに新幹線を含めると13820.1キロとなっている。

3 件のコメント:

  1. はじめまして。
    僕も同じように、国鉄末期に青春18きっぷで全国を旅した思い出を持つものです。

    特に、「このような楽しみが失われたにも関わらず、鉄道ブームになっていることが理解できない」というくだりは、全くもって同感です。

    今更何が鉄道ブームなのか。30年遅いよ。というのが本音です。

    マスコミ主導の薄っぺらい鉄道ブームに楔を入れようと、ブログでつぶやいています。よろしかったら覗いてみてください。「旅一郎」でヒットします。

    返信削除
  2. 旅一郎さん、コメントありがとうございます。気付くのが遅れ、返事が大変遅くなってしまいました(あまりブログのことがわかっていなかったようです)。すみません。何とか今日、国鉄時代のすべての記録を書き終えました。毎日忙しく、文章の切れがありませんが、いましかできないと思い、暇をみつけて文章化しました。共感していただけたら嬉しいです。

    返信削除
  3. こちらも今返事があった事に気がつきました。今でもしつこく青春18きっぷの旅を続けていますが、今の18きっぷユーザーと話ししても話題が合わず、感覚が違うのでかなり遠慮して話している自分に気づきます。
    たまに、昔してして、子供が出来たので子供に体験させてあげよう、という人がいて、その時は非常に盛り上がります。

    返信削除

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調作品102(Vn: ルノー・カピュソン、Vc: ゴーティエ・カピュソン、チョン・ミュンフン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)

ブラームスには2つのピアノ協奏曲、1つのヴァイオリン協奏曲のほかに、もう一つ協奏曲がある。それが「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」という曲である。ところがこの曲は作品番号が102であることからもわかるように、これはブラームス晩年の作品であり(54歳)、すでに歴史に残る4つの交...