2012年6月5日火曜日

ハイドン:交響曲第14番イ長調(鈴木秀美指揮オーケストラ・リベラ・クラシカ)


特に何かを書きたくなるようではないこの曲については、第2楽章が晩年の「時計」のようなリズムだったことが印象に残る程度のものだったのだが、ではなぜここで取り上げるのかと言われれば、それはこのディスクを持っているからというしかない。

鈴木秀美という神戸生まれのチェリストは、かつてブリュッヘンの主宰する18世紀オーケストラに在籍していたという古楽器奏法の我が国の第一人者である。帰国後は浜離宮の朝日新聞本社ビル内にあるホールで、古典派の演奏会を主宰するオーケストラ・リベラ・クラシカと共に開催し好評である。

ハイドンが好きな私も何度か足を運ぼうかと思っていたが、いまだに果たせていない。入場料6000円がちょっと高い、というのが本音だが、ここにその模様をライヴ収録したCDが順次発売され、第53番「帝国」などとカップリングされたものを購入してみたのである。

このようなマイナーな曲がどの程度演奏者の心をとらえているのかはわからないが、ここで聞く初期のハイドンの交響曲が、実によくまとまっていて、完成度が高い。日本人による古楽奏法のハイドン、しかも全く有名でない曲なのに、と書くと大変失礼だが、これは種々の演奏に勝るとも劣らないくらいの素敵な録音で、まったくもってハイドンが板につている。それは驚くべきことである。

このCDによって私が感じたのは、そのような演奏の完成度の高さと、ハイドンの演奏に十分な説得力を与える自信に満ちた息遣い、それをことさら強調するでもない、さやしくて頬をなでるような柔らかい響き。我が日本の演奏水準もかように高水準なのか、と畏れ入ったことを正直に告白しておきたい。

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