2012年6月3日日曜日

ハイドン:交響曲第6番ニ長調「朝」、第7番ハ長調「昼」、第8番ト長調「晩」(ヘスス・ロペス=コボス指揮ローザンヌ室内管弦楽団)


モルツィン伯爵の破産により解雇されたハイドンは、時を経ずしてエステルハージ公に仕えることとなり、優秀な音楽家13名から成る専属楽団の副楽長として新しいキャリアを踏み出す。以後、終世にわたって同家との関わりは続く。彼は、与えられた楽団員の構成で演奏可能なあらゆる形態の交響曲を作曲してゆく。「朝」「昼」「晩」と名付けられる3つの交響曲は、その出発点と言っていい作品である。

「朝」の第1楽章を聞くと、必要最低限の序奏に続いてフルートが、とてもすがすがしいメロディーを奏で、それをオーケストラが支える。私などは、「なるほど朝だねえ」と単純な納得をしてしまうのだが、実際、これは浮き浮きするような曲で大のお気に入りである。

この3つの作品には、フルートだけでなく様々な楽器の技巧的なメロディーが随所に散りばめられ、協奏曲のような趣すら感じさせる。交響曲第1番から聴き続けてくると、この3部作の見事さとユニークさは明らかである。そしてすでにハイドン自身の作風が立派に確立されていることに嬉しい驚きを禁じ得ない。

「朝」の第2楽章は静かな曲だが、ヴァイオリン独奏のメロディーなどは、とてもいい感じ。そして第3楽章のファゴットとコントラバスの響きにうっとりしていると短い第4楽章で快活に終わる。
「昼」は実際のところ、ハイドンが唯一3部作の1つであると書き記している作品で、第1楽章から充実の響き。「ああ、これが初夏の昼下がりか」などと思って聞いてしまうが、実際、レチタティーヴォ、アダージョ、メヌエットと続く第2~4楽章はそんな感じ。バロックの協奏曲を聞いているような気分になることも。そして何と第5楽章でフィナーレとなる。

日本人は「晩」というと銭湯と晩ご飯をイメージしてしまい、何か違和感もあるのだが、実際はここは華やかなヨーロッパの宮殿(第1楽章)、夏ともなると夕暮れは長い(第2楽章)。やがて日が暮れるといつのまにか蒸してきて(第3楽章)、嵐が吹き荒れることも(第4楽章)。
私のお気に入りのCDは、ヘスス・ロペス=コボス指揮ローザンヌ室内管弦楽団によるもの。ひと夏をスイスの彼の地で過ごした思い出が蘇る。ストレートだが新鮮な響きを失っていない。

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