2012年6月26日火曜日
J. C. バッハ:交響曲ト短調作品6-6
当ブログのハイドン・プロジェクトは、目下1772年を進行中だが、1773年に進むまでにどうしても聞いておきたい曲があった。それがJ. C. バッハによる交響曲ト短調である。これは、モーツァルトの交響曲第25番(小ト短調)に影響を与えた作品として、ハイドンの交響曲第39番とともに引き合いに出される作品だからである。
東京中のCDショップを回ってこの作品の入ったCDを探したが見つからず、タワーレコードのオンラインショップでようやく見つけたSACDは、発売元が倒産したとかでいつまで待っても入荷しない。もう諦めかけていたところ、6月になってようやく手元に届いた次第である。この間、しばしハイドンはお休みしておりました。
さて、あの音楽の父バッハの末っ子であるクリスチャンは、父の作風とは随分違う。それもそのはずで、15歳で父の死を迎え、その後イタリアに渡って独自の作風を確立し、ロンドンにおいて名声を博したことからもわかる(この軌跡はヘンデルと同じである)。父の時代とはもはや異なり、すでに新しい音楽の時代を迎えていたことを十分感じ取った息子は、、ここロンドンで旅行中のモーツァルト父子と出会い、モーツァルトは大きな影響を受けたということである。
ドイツとイタリアの双方の音楽が程良くミックスした感じの作品は、モーツァルトにとっても新鮮であっただろう。この作品を聞くとそういう感じがする。けれども小ト短調における様式上の影響は、ハイドンによるところが大きいような気がする。それは4つのホルンを使っている点である。モーツァルトは、ハイドンがそうしたように4本ものホルンを用いることによって、短調の旋律を際立たせている。ハイドンとJ.C.バッハによる2つのト短調作品がモーツァルトによってブレンドされたとすれば、この2つの作品が見逃すことのできない作品に見えてくる。ただ、モーツァルトの手によるト短調は、私の感想としてはとても暗い、まるで憂鬱な作品に聞こえる。ハイドンもJ.C.バッハも、それは少し違っていて、そういう息苦しさはあまり感じない。同じト短調でも表現の結果が少し違っているのは発見であった。
演奏は、エーハルト指揮によるコンチェルト・ケルン。1988年の録音ながら、非常に新鮮で鮮烈。こういういいCDがレコード会社の倒産によって絶版となってしなうのは大変惜しい。
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