2009年から少しずつハイドンの交響曲作品を順に聴いている。その直接のきっかけは、古典派の巨匠であるこの作曲家が没後200周年を迎えたことにあるのだが、それより以前から私はハイドンの音楽が好きで、交響曲全集も持っていたし、ロンドン交響曲にいたっては何組もの演奏で楽しんできた。有名な後期の作品だけでなく、比較的初期のあまりよく知られていない作品についても、ひと通りの感想のようなものを書き記しておきたいと思ったのである。
そういうことでもしないと、おそらく真剣にこれらの作品を聞こうとしないのもまた事実で、音楽の専門家でも演奏家でもない人間が、他にもしたいことがある貴重な時間を、200年以上も前に作られた音楽を聞いて過ごす、というのも実際、大変なことである。そして聴き始めてから4年が経過したが、現在は60番あたりにいるのでまあ、折り返し地点といったところであろうか。
なお次回から過去の文章を含め、1曲ずつ取り上げて行くが、その際には演奏をできるだけいろいろ変えて聞いていこうと思う。自分のコレクションの中から、丁度その曲の魅力を語るに相応しい演奏を選ぶことが出来れば嬉しいと思う。
ハイドンの作品は、以下の区分によって分類されるのが慣例である。
(1)~1760年頃:エステルハージ公に仕える以前の作品。ウィーン時代。モルツィン伯爵家の学長時代。
(2)1761年~66年:エステルハージ公の副楽長の時代。
(3)1766年~76年頃:「疾風怒濤」の時代。エステルハージ公の音楽長。
(4)1776年~84年頃:オペラ創作時代。
(5)1785年~90年:パリ交響曲を含む外国からの創作依頼の時代。
(6)1791年~:ロンドン交響曲の時代。
ここで交響曲は全部で107曲が知られており、ホーボーケン番号が付けられたもの(全104曲)の他に、交響曲A、B、それに協奏交響曲が知られている。
ホーボーケン番号は必ずしも作曲の順序に付けられているわけではないが、それはその後に生じた研究の結果であって、最初は作曲の順と思われていた。従って概ね若い番号ほど古い作品と思って良い。
モーツァルトと異なって最初から完成度の高いハイドンの交響曲は、試行錯誤の繰り返しによりこの分野のスタイルを確立したことがハイドンの音楽史上の功績のひとつであると同時に、ベートーヴェンを代表とする後世の作曲家に多大な影響を与えた。ひとつひとつの作品は目立たず地味でも、その味わいは深く大きい。古典的な作品であるため、その鑑賞には音楽的な知識があると深みが増すが、かといってそういう理解をするものだけが楽しめる作品として作られたわけではない。従って私のような素人でも、作品を自分なりに楽しむことは何ら恥ずかしいことではない。
だが音楽とその演奏、とりわけクラシック音楽について語るのは一般的に非常に難しい。よってこれからの文章が読み手にとって意義深いかどうかは、実際のところわからない。