2012年2月27日月曜日

96kHz/24bitの衝撃

これまでの記事で私は、まだハイレゾ音源には手を出していないこと、そしてそれでもなおネット・オーディオには投資する価値があると述べてきた。その理由はCDのコピーであっても、これまでの音質よりは大幅に改善された素晴らしい音と操作性を手に入れる事ができるからである。この考えは変わっていない。

しかしここで私はまた、試しに96kHz/24bitのハイレゾナンスな音楽ファイルを初めて購入し、そして聞いてみた時の感想を、興奮を持って記述せねばならない。そしてその音質のあとでは、CDの音楽がもうつまらなく思えて仕方がないのである。もしこれからこの品質が主流になってしまえば、これまで築きあげてきたコレクションが台無しになる。それは丁度今から30年ほど前に、LPレコードからCDにあっという間に起こった変化に相当するかも知れない。

そう思うのは、週末に久しぶりにタワーレコードに出かけ、古い録音のCDが実に安く売られていることを目の当たりにしたからである。ほとんどのレコード会社は、もはや止めようもないCDの売れ行き不振を、大幅なディスカウントで対抗しているように見える。だがかつてLPレコードがそうであったように、これは「売れるうちに売っておけ」ということではないだろうか?そしてハイレゾ音源がマーケットの主流になると、一気に古い録音を含めて再リリースを開始する。音質と操作性の向上で、再び音楽が売れ始める。しかもメディアを販売する必要がないので、製造コストを抑えられる。アーティストに支払う権利料が二極化される・・・。

だが、そのようにして広まった音楽は、もはや一度売れると、急に売れなくなるだろう。しかし在庫を抱えるコストは大変低いので、それでもいいかも知れない。むしろ歓迎すべきはそれまで見向きもされなかった演奏家が、自前で高音質な録音をネット上に公開し、それらが一気に広まることだろう。だとするとやはり超一流の有名音楽家を除けば、収入の確保は難しいかもしれない。それに代わって、無名の音楽家も一夜にして有名な存在に成りうる。もはや音楽事務所の立ち入る範囲は少ない・・・。

となるかどうかは別にして、ファンとしては新しい音楽に接する機会が増えることを素直に喜べばいいのかも知れない。私が生きている間に、過去の音源も含めハイレゾ化されると、私は一生かけてそれらを再び味わうことができるのだから・・・。

世界でも有数のLinn Recordsは、このようなハイレゾ音源の草分けである。今やユニバーサル系の2つのレーベル、Deutsche GrammophonとDeccaが加わった。例えば今日見たところ、ヨッフムの「カルミナ・ブラーナ」やマリナーの「四季」などの往年の決定版までもがリストに登場している。ところが、これらの音楽はIPアドレスが日本を特定すると、購入ができない仕組みになっている。これほどの落胆があるだろうか?他にこれらを入手する方法がないのである。消費者に選択肢を制限するやり方で、日本のユーザは不当に差別されている。

だが、異なるレーベル、例えばPentatone ClassicsやChandosなどはこの規制からは今のところ外れている。そしてLinn自らが作成を手がけるいくつかの録音がある。そのうちのひとつがアルトゥール・ピザーロを独奏に迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、第4番、それに第5番「皇帝」のカップリングである。伴奏は亡くなる直前のサー・チャールズ・マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団である。このコンビの名前を聞けば、CDであっても食指が動く。だがそれが一気にダウンロード可能で、すぐに私のPC経由でネット・オーディオを鳴らすことができるのである。

さっそくユーザ登録をしてカートに入れレジへ進むと、初めての利用ということでダウンロード用のソフトウェア・アプリのインストールを勧められる。もちろんそうした。そして早速ダウンロードが始まる。決済はクレジット・カード。96kHz/24bitのflacもしくはWMAファイルで24米ドルである。1ドル80円で計算すると1920円となる。しかも3曲が収録されている。ちなみにCDそのものは22ドル、flacでもCD並の44.1kHz/16bitなら13ドル、MP3/320kbpsだとわずかに11ドルとなっている。迷わずflacの96kHz/24bitを選択した。さらに選択肢として24bit/192kHzというのも同じ24ドルで購入できる。ただしこちらはデータ量が4GB近くある。一方、flacの 96kHz/24bitでは2GB足らず。この容量もダウンロード前に表示されている。

さて私は実は誤ってWMAファイルをダウンロードしてしまった。WAVと間違えたのだが、いずれにせよロスレス圧縮なので変換してしまえば問題がない。KORGのAudioGateという無料のソフトを立ち上げ、あっという間にWAVへの変換が終了、この作業はflac→WAVでも同じ手間。あとはUSBメモリーに移して再生するだけである。

するとその音は、これまでに聞いたことのないような自然な奥行きがあり、しかも喩えようもないくらいに美しい響きに包まれた。おそらく高級なSACDの再生機を使えば、これくらいの再生はできたのだろうと思う。だがそれが実に簡単で安価に可能になったわけである。

これで私はハイレゾ音源に衝撃を受けた。そして他の録音も早急にダウンロードしてみたいと思ったのである。だが財布と相談しなければならないし、目下e-onkyoを含め購入可能な録音はさほど多くはない。懸念することは、DRMフリーなこれらのファイルが、ネット上に流通してしまわないかということだろうか。このビジネス・モデルが生き残るには、こういった面でも注目される。

音楽はもはやディスクではなくなった。トラック単位での購入も可能だが、実際には美しいジャケット写真がついてくるのは、CDの名残だろうか。やはり人間は手にとって物を眺めたいのかも知れない。そしてジャケット写真もライナー・ノートも同時にダウンロードされた。ファイルの合計はWAVに変換したら3GBを優に超え、私のハードディスクもあっという間に満杯状態となった。

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