2012年2月20日月曜日

音楽ファイルの形式

CDプレーヤーを駆動し、その場でアナログ変換までを同時に行う従来の再生方式より、PCにおいて予めコピー(リッピングという)しておき、デジタル・ファイルをネットワーク・オーディオ再生機でそのまま再生してアナログ変換する方が、エラーの発生やノイズの混入が低減されるため音質がいいということを述べた。ではCDからリッピングしてハードディスクに保存するファイルは、どういう形式が望ましいだろうか。

数多あるCDのリッピング・ソフトのいずれを用いた場合でも、通常その保存型式はいろいろ設定できることになっているが、「そのまま」保存する場合にはWAVという拡張子が付く型式となる。もっとも私が用いている優れたフリー・ソフトExact Audio Copyでは、そのコピー処理を厳格なまでに実行する。エラーが発生した場合には何度も読みなおすし、様々なデータベースにアクセスしてその確実性を検証してくれる。これによってCDプレーヤーのように同時性を確保しながら再生するのとは違うより正確なデータがローカル保存できる。

ただWAVという型式は、CD一枚あたり650MB程度の容量がある。そこで、これをデジタル処理により圧縮し、もう少し小さな容量のファイルに変換することができる。その圧縮の種類によっていろいろな形式が存在するのだが、一般的には圧縮しないほうが音質がいい(少なくとも悪くはない)ということである。可逆的な、つまりロスレス圧縮なら同じではないかという意見がある。だが私が試したところ、明らかに圧縮のないWAVファイルの方が、音質は上であった。これは圧縮したファイルを解凍する際の処理が入る分、CPU等に負荷がかかるためではないかと推測している。

従って、今のところ、リッピングしたCDの音楽データは、そのままWAV形式に保存しておくに限る、と考えている。幸いなことに大容量のHDDも随分と安くなったし、PCと二重に管理すればバックアップも可能だ。500GBのHDDなら、1枚700MBとしても700枚程度の収容が可能である。ただ、WAV形式だと音楽に付随した様々なデータ管理に制約があるので、これを嫌う向きも多い。私はフォルダの構造を工夫している。音楽ファイルの様々なデータ(トラック毎の曲名や演奏家名など)は、Exact Audio Copyの場合、フリーのDBへアクセスして情報を採取してくれる。これで大抵のCDは曲名を都度入力する必要がないが、その表現方法はまちまちである。クラシックならアーティストの欄に作曲家が入ったり指揮者がはいたっりするし、曲名がドイツ語だったりフランス語だったりする。結局、曲名ファイルの編集も結構煩雑なので(楽しい作業ではあるが)、フォルダ名を工夫することにしている。

圧縮して保存するメリットは、それを携帯音楽プレーヤーに持ち出す場合である。私はiPodを利用しているが、この場合にはMP3のような効率的な圧縮形式を採用することにしている。もちろん音質と容量のトレードオフとなるが、数年前に256kbpsで統一することにした。だが192kbpsでも良かったかも知れない。これで80GBのiPod Classicに500枚近いCDが収録できる。MP3を使用するのは、それが汎用的で、編集にも優れているからである。だが、今やネット・オーディオでの再生も可能となったので、不可逆圧縮のあるファイルではちょっと物足りない。

そこでファイル容量がある程度少なくでき、しかも復元可能な可逆圧縮の形式が注目される。様々な形式があるが、その中でももっとも普及しているのはflacと呼ばれる形式である。これで1枚のCDが300MB程度にはなる。だが先に述べたように、そのまま再生するならWAVの方がいい感じがするし、持ち歩くには容量が大きい。従ってこれはダウンロード時の時間節約のための形式と考えている。もちろん可逆圧縮なので、任意に両形式は変換可能で、そのためのソフトも数多い。ただアップルが昨年末に独自の可逆圧縮方式alac(Apple Lossless)をオープン化した。iTunesではflac形式を再生できないので、今後はもしかするとalacが主流になる可能性もある。

e-onkyoなどのハイレゾ音源は、今のところWAVもしくはflacの選択式が多い。WAVやflacと言ってもハイレゾなので、CDの44.12kHz/16bitではなく、96kHz/24bitという高音質ファイルである(従って容量もでかい)。

iTunesのような音楽ダウンロード・サイトでは、今でもalacやAAC、それにMP3が主流である。MP3は高音質と言ってもせいぜい128kbps程度なので、これはやはり携帯専用と割り切るべきだろう。だが今後どのようになるかは、注目に値する。

DSDのような画期的な形式の音楽配信は、まだ試行段階である。だがこれも実際には目が離せない。それはすでに音楽録音の現場ではDSD録音が主体となっており、PCM録音とは明らかに違う音場感が得られるからである。このことはSACDで既に体験済みである。しかしSACDのような5.1chのようなサラウンド録音は、これをダウンロードするには至っていない。従って、現時点ではせいぜいflac形式の音源ファイルをダウンロード購入し、再生して楽しむレベルである。そう言ってもこれまではSACDでしか味わえなかったCDを上回る音質が、やっと手軽に楽しめる時代になったということが、非常に嬉しい。

昔のメジャー・レーベルの音源も、できればハイレゾ配信して欲しいところだ。けれども、米国のHDTracksが購入できなくなってしまった以上、当面は手持ちのCDをせっせとリッピングして、ネット・オーディオ装置で再生する楽しみで妥協するしかない。だが、これは妥協と言うにはもったいないくらいに素晴らしい。音質の改善効果が半端ではないからである。

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