2012年2月18日土曜日

Pioneer N-30

ネット・オーディオを構築することになった直接の原因は、昨年末にPioneerから発売されたN-30及びN-50が、大変安くしかも満足の行くスペックであったからだ。このネット・オーディオは、大きく分けて3種類の楽しみ方ができる。

まず第1番目が、USB接続による音楽ファイルの再生で、USBメモリやiPod等に入れられたファイルをそのまま再生し、アンプに向けて音声を出力するというものである。ということは内部にDA変換器があるということだが、N-30に関してはどういうわけかPCを直接接続しての再生(つまりUSB DACとしての利用)はできない。また、デジタル信号を入力してアナログに変換するだけの、すなわちDA変換器単独での利用もできない(N-50はいずれも可能)。

私はPioneerのアンプA-A9というのを持っており、これに接続しているのだが、このアンプには付け足しながらもUSB DAC機能がついており、PCからUSBケーブルでつないだ形で音楽ファイルを聞くことがすでに出来ていた。そういうこともあって、今回はN-50ではなく、より安いN-30にしたわけである。もっともPCをLAN接続してPCにミュージック・サーバ機能を持たせ、音楽再生ソフト(foobar2000を私は使っている)による再生を楽しむこともできる。

第2番目の楽しみ方は、このようなLAN接続による再生である。LAN接続とUSB接続がネット・オーディオの主流だが、この機種はそのどちらもができるというわけである。LAN接続にも様々な形態がああって、上記のようにPCをサーバとする以外に、NASを利用する方法がある。これがもしかすると普及していくのかもしれないが、NASを接続するということは、その中にCPUやOSが組み込まれている以上、一種の専用コンピュータが存在することに変わりはない。従って、私の現時点での結論は、NASを購入するくらいなら、PCサーバでもいいのでは、というものである。

ただいろいろ試したところ、foobar2000による再生を無線LAN経由で行った場合よりも、同じファイルをUSBメモリにコピーして再生したほうが、高音の伸びと全体的な安定感がかなりいいという状況にある。しかもこのUSBメモリの代わりに、USB接続可能なHDDであっても、フォーマット形式さえ合わせれば原理的には同じであると推測される。だがこれはサポートされていないと説明書には書いてある。

LAN接続による楽しみには、iPod touchやiPhone、またはiPadからの再生も含まれる。だがこの場合、再生しているのはあくまでこれらのアップル製品である。この携帯型の端末は、残念なことに容量が少ない。多くのファイルを入れるには音質を犠牲にして不可逆な圧縮ファイル(例えばMP3)として保持する必要がある。これは手軽に楽しむにはいいが、オーディオ趣味としては中途半端と言わざるを得ない。

第3番目は、おそらくもっとも価値が高いと思われるインターネット放送のチューナーとしての利用である。これは世界中に散らばるありとあらゆる放送局の番組をストリーミング再生するというもので、パソコンでできることをパソコンなしでやろうというものだが、音質は格段に素晴らしい。

インターネット放送の音質は、一般的にはストリーミングの帯域に依存するが128kbps以上であれば、高音質のステレオ放送として申し分がない。有名な放送局(Berlin KlassikとかBBC、WQXRなど)はもちろんクラシック以外のジャンルにも数えきれない位の放送があるので、これだけで一年中楽しめるし、もはやCDを揃えて置く必要はないのかも知れないとさえ思える。満足なFM局がない我が国で、いまやPCを立ち上げなくても手軽に世界中のラジオが聴けるようになったのは、短波放送を趣味としていた私にとって、隔世の感があるのである。

このようにネット・オーディオの楽しみは多彩だが、さらにもう一つ、忘れてはならない要素は、これらの再生や選曲の操作を、手元のiPad等でできることである。Pioneerからフリーでダウンロード可能なiPadアプリは、まだ十分に使い勝手がいいわけではない。だがそれでもなお、その操作感の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。音楽を楽しみながら、新聞を読むということがソファに座ったままオンラインでできる。

音質について。これについては別に話す必要があるだろう。一言で言えば「最高級のCDプレーヤと同等かそれ以上」ということになる。「それ以上」というのは、CDを上回る品質の音楽ファイルも再生できるからだが、そういったハイレゾナンス音源をダウンロードするには、まだ環境が整っていない。唯一望みだったHDTracksという米国のサイトは、今月初頭より米国以外のサーバからアクセスされた場合のダウンロードを拒否している。これは著作権の問題であって、技術の問題ではない。

CDをリッピングしてflacファイルにて再生する場合、これはもう手元の中級CDプレーヤーを上回る音質である。音の安定感と全帯域にわたるクリア感は、嬉しくなるほどだが、これはインターネットラジオでも同様である。なお私はリッピングにExact Audio Copyというフリーソフトを用いている。

唯一の不満足な点は、ギャップレス再生ができないことである。このことが、私をして本機を入手する際の最後までの悩みであった。だが、技術の進化はいずれ避けられないし、この世界ではほしいと思った時が買い時である。実売価格が3万円にしか過ぎないこと、同じ機能を持った装置はつい先日まで数十万円もしたことを思うと、これは買って損をしない。あと一つの注意点は、その大きさと重さだが、これは個人の環境次第であろう。

--------------
(2013年3月3日 追記)
先日Pioneerは、N-30/50向けソフトウェアの無償アップグレードサービスを発表した。これにより上記の記事は一部修正する必要がある。それらには①ギャップレス再生の実現、②ControlAppの表示上の改善、③AppleLossless及びAIFFフォーマットへの対応、などが含まれる。ダウンロードは専用サイトから自前のPC経由でUSBメモリへコピーすることにより実施する。まだ試したわけではないが、これにより本機の欠点が大幅に改善されたということができる。しかも購入後2年近くが経過しているにもかかわらず、無償で改善がなされることに嬉しさを禁じ得ない。Pioneerは利用者を裏切らなかったということだろう。大いに評価したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブラームス:「ハイドンの主題による変奏曲」変ロ長調作品56a(クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団)

ブラームスの今一つの管弦楽作品「ハイドンの主題による変奏曲」は、ハイドンの作品を元にしたものではない。ハイドンの作品とされていた頃のディヴェルティメント第46番変ロ長調Hob.II.46の第2楽章を題材としている。この曲は「聖アントニウス」というタイトルが付けられているように、古...