2012年2月21日火曜日

携帯音楽プレーヤー

ネットワーク・オーディオが普及する前は、iPodが音楽ダウンロードのメインストリームだったし、今もiPhoneやiPadなどの機種が増えたものの、その流れは変わっていない。だが、携帯する音楽というコンセプトは、1980年頃のSONYによって打ち立てられた。丁度私が中学生だったころ、ヘッドフォンで歩きながら聴くカセットテープレコーダーが、何とも異様な雰囲気をもたらしたと思った。音楽をひとりで聴くという行為というよりも、そのことによってコミュニケーションを遮断しているように思えた。何もそこまでして音楽を聞く必要があるのだろうか、と言われたものだ。

だが高校生になって友人がWalkmanを買い、自慢げに学校に持ってきた。少し私も聞いてみたが何ともそれが格好良く、しかもヘッドフォンで聴く音楽は、ノイズも遮断するのでいい音質だと思った。それから数ヶ月が経って、私も東芝製の類似品(ウォーキーとか言った)を買った。FMラジオもついているやつで、小さな弁当箱ほどの大きさのそれを、私は持ち歩くと言うよりは自分の机に置いて、受験勉強をしていたのを思い出す。

この頃に聞いた音楽は、FM放送をエアチェックして録音したもので、その音楽は今でもCDとして買い直し持っているものが多い。忘れ難い演奏の数々は、いずれまとめて紹介しようと思ってはいるが、ゼルキンのベートーヴェン、メンデルスゾーンの無言歌集など、ごく私的なベスト・アルバムである。

インターネットが普及した21世紀に入って、ダウンロード型の音楽販売に先陣を切って乗り出したのもSONYだったと思う。Net対応のMDウォークマンMZ-N1が発売されたまさにその日に、私は新宿のヨドバシカメラ本店で、これを購入した。デジタル録音が手軽にできるMDに、ダウンロードで入手したファイル(これはATRAC3という形式)を入れて持ち歩く。さっそく私は帰宅して、VAIOにADSLモデムを繋いだ。SONYの音楽サイトで入手できた音源は、しかしながらキャンディーズの「微笑がえし」くいらいしかなく、私は大いに失望した。SONYは著作権の問題に負けたのではないかと思っている。

しばらくたって一時凋落の激しかったAppleからiPodが発売された。最初のiPodは、オペラのようなトラックの多いものを聞くと、いちいち空白時間が入るなどといった、私の今のネット・オーディオのような状況だったが、あれよあれよという間に携帯音楽の標準機となってしまった。SONYもネット対応のウォークマン(Net MD)を次々と発売したが、東芝のgigabeatやPanasonicのD-snap同様、歯が立たなかったと言っていい。圧倒的なシェアにより、1Gあたりの単価はアップルが安いということが大きかった。

けれどもiPodの音楽はクラシックなどには不向きで、圧縮率が大きために聞くに耐えない音楽であると思われていた。確かにiTunesよりダウンロードしたビットレート64kbpsのファイルは、イヤホンで聞いても音質が充分とは言えないような気がした。けれども2つの工夫により、充分に高音質な再生環境となることがわかると、すぐさま私は第2世代iPod nanoを、翌年にはiPod Classic(80GB)を購入した。ここで2つの工夫とは、ファイルの圧縮率を決して下げないことと、イヤホンを高級な機種にすることである。私は256kbpsのMP3ファイルをiPod nanoに入れて、SONY MDR-EX90SLというイヤホンで聞いている。

このイヤホンは大変充実した音だが、常に持ち歩くにはやや負荷が高い。8000円もするので壊したり無くさないかと心配である。iPodではPodcastとかも聞くので、何も常に高級イヤホンである必要はない。そこで通常は1000円クラスの最安値イヤホンを持ち歩いている。このイヤホンも、いろいろ聴き比べた結果SONY  MDR-E10LPに落ち着いた。WalkmanではiPodに負けたSONYだが、なかなか魅力的なイヤホンを発売しているので、私はひそかに応援している。そして最近ではAppleに継ぐ携帯音楽プレーヤーは、やはりSONYということになっているようだ。もちろんMP3にも対応しているので、もはや一度録音したファイルが別の機器で聞かれない、などということはなくなった。これも進化ではある。


以下は2008年に書いた SONY MDR-EX90SLのブログ記事である。参考までに転載しておく。

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通勤途中の電車内で、iPodに録音した音楽を聞いている。そのようにしないと他に聞く時間がないことが理由だが、今ではこの小さな録音機器が気に入っていて、小さいながらもそこそこ高音質ということがわかり、かつてウォークマンを持ち歩いていた時に比べると、その手軽さの違いは歴然である。

iPodで聞く音楽を高音質に保つ秘訣は、ロスレス圧縮で収録することに加え、そこそこいいイヤホンを選択することのようである。そこで私はある日、有楽町のビックカメラでいろいろ聞き比べを行った。最初は、audio-technicaの1万円台のものを買う予定だったが、そこにはBOSEとかSONY とか、他にも海外製品を含め数多のイヤホンが順番に展示されていて、しかも聞き比べができるように音楽が流れている。

私は小一時間にわたりその数点に絞って何度も何度も比べてみたが、そうしているうちにだんだんとどれが本当にいいのかよくわからなくなってしまった。好みの問題もあろうし、聞く音楽の種類によっても最適なイヤホンは違うものと思われた。BOSEなどは独特の音がしたが、その違いは非常に鮮明であるものの、それはそれで魅力的である。けれども他と明らかに違うので、うまく作られた音がしているように思えた。

DENONのものは、やはりこのメーカーらしく、ピュアで装飾のない感じ。好きかと言われたら、ちょっとどうかと思うのはあくまで個人的な印象。かつてカートリッジで名を馳せたシュアなどのものもあって、私の同僚はそれを強く勧めたのだが、装着感やデザインなども気になってきて、どれがいいかよくわからない。

そのようにして、最後はこれにしようとレジへ運んだのは、SONYのMDR-EX90SLというモデルであった。何でSONY?という感じだったが、これを聞いてみると、何とも素敵な音がする。それまで聞いても感動しなかったCDが甦る、蘇る!

ポータブルのCDプレーヤーに差し込んで片っぱしから聞いていったが、飽きないばかりか、いい演奏の再発見の連続!たとえば、マゼールがニューヨーク・フィルを振ってライヴ収録したR.シュトラウスの「ドン・ファン」。その最初の出だしを聞き比べると、再生装置の違いが明瞭であった!

そのようにして昨年の夏は、ネトレプコのアリア集を聞いていた。暑い夏休みの朝、通勤電車で聞くヴェルディやベッリーニのアリアが、何とも心地よい。続いてラトルのハイドン!この1曲がだいたい田町から新宿までの山手線の長さにちょうど良い。ただ新宿駅につくと、例のJRの駅の発車音楽が重なり、いい気分も台無しである。しかも14番線のそれは、なぜかひときわ大きなボリュームである。JRには、私のような音楽愛好家の意見を取り入れ、つまらない音楽を流さないようにしてほしい。

さて、私はclassic fmというイギリスの雑誌を最近買ったのだが、ここに附録として添付されていたCDをさっそくiPodに入れて聞いている。NAXOSを中心とした音源だが、どこかのレコード雑誌と違い、選曲に優れ、しかも配列も確か。2月号のテーマは「動物の謝肉祭」で、サン=サーンスの同名の曲だけかと思いきやさにあらず、いろいろな動物にちなんだ曲が次から次へと出てきて、私はしばし聞き込んでいた。

このSONYのイヤホンがいいのか、NAXOSの廉価版CDの演奏もなかなかである。

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