一般にこの時期のハイドンの作品は、オペラを多作していた時期にあたり、そのためかいわゆる「聞いて楽しい曲」を多作した。そこでは音楽的な様々な試みがむしろ影を潜め、大衆迎合の時代とも言われる。今風に言えば「受け狙い」ということだろう。だが、この曲は何と言っていいか、とても特異な感じのする曲で、音楽的にも様々な試みがなされているようだ。
専門的なことはよくわからないので聞いた印象から言えば、ハイドンの初期の作品からはかなり充実したものが感じられるが、より後期の作品ほどではない。また誰か他の作曲家の作品、たとえばモーツァルトやベートーヴェンのようかと言われると、幾分そうかもしれないがやはり違う。当たり前といえばその通りだが、これはやはりこの時期のハイドンの作品だろう。
短いが無駄のない序奏で始まる第1楽章は、メロディーが独特で聞いていて飽きない。主題の提示、反復、展開といったソナタ形式の教科書のようなきっちりとした構成である。続く第2楽章は比較的長いロマンチックとも言えるような曲だが、第3楽章のメヌエットもその延長のような感じである。聞いていて楽しいかと問われると難しいが、ここのトリオはなかなか印象的である。
これに対して第4楽章はなかなか充実しており、全体の白眉とも言える。流れるような弦楽器に時おり顔を出すオーボエが楽しい。全体にバランスが良く、長すぎず短すぎず、明確なメロディーラインで、すっきりと終わるのも好ましい。演奏は再び、アダム・フィッシャー指揮のオーストリア=ハンガリー・ハイドン管弦楽団の全集から聞いている。大分慣れてきた快進撃の演奏でツボのようなものを押さえている。悪くない。
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