意味ありげな序奏で始まる第1楽章は、続く第1主題で印象的な3連打の音符がそれまでにない雰囲気である。勢いがあって、バランスのあるいい曲のようにも思えるが、より後年の曲に比べるとどうしても分が悪い。
第2楽章は静かにダンスを踊るような曲で、しみじみと味わいがあるのだが、第3楽章に続くと同じような感じが長くなり、第4楽章も重なりあう感じと落ち着いた風格が好印象であるものの、これというものがあとに残らない。このブログを書くにあたって、ちょっと苦労した。
だが演奏については少し書いておきたい。この曲を私は鈴木秀美が指揮をするオーケストラ・リベラ・クラシカによるもので聞いた。録音は2005年である。
古楽的な手法によって主に古典派の作品を演奏するこの団体は、当然ながらほとんどが日本人のオーケストラである。ところがその溌剌として明るい演奏は、ヨーロッパの伝統こそ感じさせないものの技術的には引けを取ることなどなく、むしろ新鮮で新しいスタイルを持っているようにさえ思う。それは本場の演奏にはない魅力を持ち、さらにはその上を行くのではないかと思われるようなものを感じさせる。日本人の演奏家にこれほど多くの素晴らしい古楽器奏法奏者がいるのかとさえ思う。よく練習された精鋭の音楽家が、日本にもハイドンの埋もれた作品を最高の水準で演奏することができるのだと、主張している。
選曲がどのように決まられるのかはよく知らないし、私も実演を聞いたことがないのだが、このCDでは演奏会をそのまま録音したような組み合わせにより、ヴァンハルの交響曲ホ短調、ハイドンの交響曲第75番、それにモーツァルトの「プラハ」交響曲がカップリングされている。わざわざ有名でない作品を取り上げるハイドンの一連のシリーズは、私のような収集家の脇をくすぐる凝った選曲である。そしてその演奏の素晴らしさは、録音の良さも手伝って、目立たないが他には代え難い価値を放ち続けている。
もしかするとこの演奏で聞くことによって、ハイドンの75番という交響曲は新たな息吹を吹き込まれたのかも知れない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調作品102(Vn: ルノー・カピュソン、Vc: ゴーティエ・カピュソン、チョン・ミュンフン指揮マーラー・ユーゲント管弦楽団)
ブラームスには2つのピアノ協奏曲、1つのヴァイオリン協奏曲のほかに、もう一つ協奏曲がある。それが「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」という曲である。ところがこの曲は作品番号が102であることからもわかるように、これはブラームス晩年の作品であり(54歳)、すでに歴史に残る4つの交...
-
現時点で所有する機器をまとめて書いておく。これは自分のメモである。私のオーディオ機器は、こんなところで書くほど大したことはない。出来る限り投資を抑えてきたことと、それに何より引っ越しを繰り返したので、環境に合った機器を設置することがなかなかできなかったためである。実際、収入を得て...
-
1994年の最初の曲「カルーセル行進曲」を聞くと、強弱のはっきりしたムーティや、陽気で楽しいメータとはまた異なる、精緻でバランス感覚に優れた音作りというのが存在するのだということがわかる。職人的な指揮は、各楽器の混じり合った微妙な色合い、テンポの微妙あ揺れを際立たせる。こうして、...
-
当時の北海道の鉄道路線図を見ると、今では廃止された路線が数多く走っていることがわかる。その多くが道東・道北地域で、時刻表を見ると一日に数往復といった「超」ローカル線も多い。とりわけ有名だったのは、2往復しかない名寄本線の湧別と中湧別の区間と、豪雪地帯で知られる深名線である。愛国や...
0 件のコメント:
コメントを投稿