2012年7月28日土曜日

ハイドン:交響曲第75番ニ長調(鈴木秀美指揮オーケストラ・リベラ・クラシカ)

意味ありげな序奏で始まる第1楽章は、続く第1主題で印象的な3連打の音符がそれまでにない雰囲気である。勢いがあって、バランスのあるいい曲のようにも思えるが、より後年の曲に比べるとどうしても分が悪い。

第2楽章は静かにダンスを踊るような曲で、しみじみと味わいがあるのだが、第3楽章に続くと同じような感じが長くなり、第4楽章も重なりあう感じと落ち着いた風格が好印象であるものの、これというものがあとに残らない。このブログを書くにあたって、ちょっと苦労した。

だが演奏については少し書いておきたい。この曲を私は鈴木秀美が指揮をするオーケストラ・リベラ・クラシカによるもので聞いた。録音は2005年である。

古楽的な手法によって主に古典派の作品を演奏するこの団体は、当然ながらほとんどが日本人のオーケストラである。ところがその溌剌として明るい演奏は、ヨーロッパの伝統こそ感じさせないものの技術的には引けを取ることなどなく、むしろ新鮮で新しいスタイルを持っているようにさえ思う。それは本場の演奏にはない魅力を持ち、さらにはその上を行くのではないかと思われるようなものを感じさせる。日本人の演奏家にこれほど多くの素晴らしい古楽器奏法奏者がいるのかとさえ思う。よく練習された精鋭の音楽家が、日本にもハイドンの埋もれた作品を最高の水準で演奏することができるのだと、主張している。

選曲がどのように決まられるのかはよく知らないし、私も実演を聞いたことがないのだが、このCDでは演奏会をそのまま録音したような組み合わせにより、ヴァンハルの交響曲ホ短調、ハイドンの交響曲第75番、それにモーツァルトの「プラハ」交響曲がカップリングされている。わざわざ有名でない作品を取り上げるハイドンの一連のシリーズは、私のような収集家の脇をくすぐる凝った選曲である。そしてその演奏の素晴らしさは、録音の良さも手伝って、目立たないが他には代え難い価値を放ち続けている。

もしかするとこの演奏で聞くことによって、ハイドンの75番という交響曲は新たな息吹を吹き込まれたのかも知れない。

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