
そのハイドンの交響曲は、後にパリ交響曲を経てロンドン交響曲へと発展するのは承知の通りだが、疾風怒濤期とパリ交響曲に挟まれた比較的充実した創作期においては、ハイドンの作品はむしろオペラに向けられていたようだ。オペラや劇のための作品がこのころに多く作曲されている。では、その境目はどこか。
私はずっと交響曲作品を順に聞き続けてきたが、この第53番「帝国」を聞くと、もはやここではハイドンの音楽が確立され、堂々として自信に満ちた風格を漂わせていることに気づかざるを得ない。序章を経て華やかな第1楽章に始まり、緩徐楽章、メヌエットを経て3部形式の終楽章に至る、という交響曲の典型的な形式が、ここではもはや何の疑いもなく見られるのだ。
だが、少し調べて見るとこの作品は、実際には前番の52番が1771年の作品であるのに対して、1778年となっている。その間に7年も間隔があるが、もちろんその間にも交響曲は作曲され、それらには次の54番から58番が続き、さらには1766年の59番までもが実にこの53番の前の作品ということになるのである。つまり、いつも言われるようにホーボーケン番号と作曲順は一致しないのだ。
というわけでハイドンの中期の円熟期を迎えるには、60番「うかつ者」まで待たねばならない。53番は、まあこの順番に聞くなら、いわば予告編とでも言うような感じである。
演奏は、今回MP3ファイルとして所有することになったのが、オルフェウス管弦楽団によるものだった。この団体は指揮者を持たないために、演奏がきわめて自発的、そして完璧である。だが、そのせいなのかわからないが、何か息苦しいものを感じる。言ってみれば、コンピュータに演奏させているような感じである。けれどもそれがユニークであるとも言える。「帝国」という名前に相応しく堂々とした作品である。
安心しながらハイドンの良さを味わうことができるが、後半にはもっといい作品が目白押しであることを考えるとこの作品の個性が引き立たない。終楽章には3つの版があるようだが、それはこの作品がとても人気の高い作品だったことを示している。
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