
第76番からの3曲は(あまり知られてはいないが)「イギリス交響曲」とも呼ばれ、ハイドンがイギリスを訪問する際に持参する予定だったようだ。これは後の「ザロモン・セット」などよりも前のことである。
第76番は特にリズムの処理が面白く、何やら列車が走る様を思い起こさせた。そう言えば当時のイギリスは産業革命の真っ盛りで、蒸気機関が発明されたのもこの頃である。機械のような連続した速いリズムが、そういう感じを表しているとしたら少し考え過ぎだろうか。
古楽奏法の広まりがもたらした効果のひとつは、それまで埋もれていた古典派の作品に新しい光をあてたことである。ハイドンのこの作品を、初めて今回はロイ・グッドマンが指揮するハノーヴァー・バンドによって聞いている。この演奏の特徴は、いつも通奏低音のチェンバロが鳴り響いていることだろう。これまでの演奏になかった効果なので、それは実に楽しく、耳に心地よい。あまりこのような演奏ばかり聞いていると、少し耳障りな感じがしなくもないが、私にとって76番にして初めて聞くグッドマンの演奏は、なかなか新鮮で嬉しい経験だった。
第2楽章の落ち着いた感じも後半になって盛り上がり、この曲がもはや試作品というようなものではなく、むしろ自信作の趣きを有している。各楽章の長さや速さのバランスもいい。そういうわけでなかなか聞き応えのある曲なのだが、でも後半の「パリ交響曲」や「ロンドン交響曲」のようなユーモアや洒落はまだなく、真面目である。そういったことがこの時期の交響曲の存在感を薄めてしまっているのは、残念であるが仕方がないことなのかも知れない。
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