2012年7月19日木曜日

ハイドン:交響曲第66番変ロ長調(クリストファー・ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団)

作曲年の1778年は、第65番から10年程度離れている。そしてこの年はモーツァルトで言えば交響曲第31番「パリ」といったあたりである(ケッヘル番号300番前後)。第66番の曲を聞いてまず思うのは、古典派の交響曲としての充実ぶりである。典型的な古典派のイメージであり、長調の明るさとおおらかさ、そして躍動感を持ち合わせている。

音楽は時に立ち止まり、次のフレーズが印象的に出てくるのは、あの「ジュピター」を思い出させる。わかりやすい展開部もしばし物思いにふけるような陰影を持っていて、続く大作曲家の時代の先駆けを感じさせる。弦と管の重なり方も、素人が聞いてもおなじみの雰囲気で、心が落ち着く。

第2楽章はすでに結構ロマンチックである。10分も続くアダージョは規模も大きいが、充実していて聴きこむような美しいところもあるし、急激に音が飛び出すところもある。これまで聞いてきたハイドンの交響曲の中では、一頭飛び抜けた感じがする。オペラを多く作曲したこの頃のハイドンは、イタリア風のメロディーを交響曲に取り入れて、それまでにない深みと美しさを獲得したのではないだろうか。ただ陽気なだけでなく、旋律のひときわ印象的な歌わせ方はカンタービレの世界である。

それにしては平凡な第3楽章も、続く第4楽章も、ホグウッドの演奏で聞くと大変素晴らしい。ホグウッドのハイドンは90年台に相次いだ一連の古楽器演奏によるもののひとつであり、古典的演奏の最も美しい形だろうと思う。それまでほとんど見向きもされなかった初期から中期の交響曲が、この時代に一気に新しいスポットライトに照らされていまなお輝いている。いくつかある同種の演奏の中でも、特に私のお気に入りである。

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